対柏戦(11−10A)。

ポジション・フットボールを意識している,とされるけれど。


 それならば,トップが流れた「まま」ではいけない。アタッキング・ミッドフィールド,と言うかウィンガーが,インサイドに絞るような形でボールを預かろうとしてはいけない。はずですが,実際にはトップが流れた「まま」の時間帯もありますし,流れに応じてアタッキング・ミッドフィールドがインサイドに入り込んでいるときもあるわけです。そのときに,どんな対応をユニットとして意識しているのか。どうも,その「約束事」があるような,ないような。どうも「例外的な対応」が意識されていない,と言いますか,その例外的な対応が昨季のエッセンスになるはずなのに,それが生かし切れていないと言いますか。


 国立霞ヶ丘での柏戦であります。


 例外的にマッチデイ当日のエントリとなりますが,今回はちょっと気になるポイントを抜き出す形で書いていこうと思います。


 最も気になるのが,セントラル・ミッドフィールドについての「約束事」です。


 今節のセントラルは,暢久選手に柏木選手。第7節では暢久選手がシングル・アンカー的なポジション取りかな,と感じましたが,ここ数節は,そのギャップが小さなものになっているような感じです。さて。柏木選手が持っている機動性を思えば,彼のポジションはセントラル・ミッドフィールドと言うよりはアタッキングに近い位置に,と思うところです。でも,実際にはかなり泥臭い仕事をしてもらっている状態です。ボールの収まりが悪いことの裏返し,という部分もあるでしょうが,彼のポジションがセントラルどころか,センターバックとほぼ変わらないような位置にまで下がっている時間帯も決して少なくない。助けられている,という側面もあるのですが,それでももったいないな,と思うのです。


 対して,攻撃面でありますが。


 かなり相手ゴールから遠い位置で試合に絡まざるを得ない,という部分が心理面に与えている影響もありましょう。ここ数節,縦に厳しいパスにかなり意識が傾いてしまっているように感じます。むしろ,シンプルなパス・ワークから縦を狙っていってほしいフットボーラーなのですが,縦に仕掛けていくような形があまりに少ない。と言いますか,縦にポジションを循環させることについて,何らかの制限があるのか,今季はセントラルがポジションを上げていく,という局面がいささか少なすぎるように感じます。ボールを預けて,さらにボールを呼び込みながら縦を狙う。そんな形を見られない。同じことは,暢久選手にも言えることです。セントラルに構えているわけですが,どうもオリジナルのポジションから大きく縦に仕掛けていく,という形にはならない。どうにかして,ボールを預けるポイントを見つけようとしているように映ります。無理に預けようとするから,そのタイミングを相手に狙われる。ボール・コントロールを失う,という部分で考えると,今節はそのきっかけを提供するような形になっていましたが,


 深くまで入れている,という意味で考えると,ここ数節は峻希選手だけが積極的にエリアを奪いに行っている,と感じます。そのときに,峻希選手とコンビネーションを引き出せるような距離感で誰かがいるか,であるとか,センターに連動するような形で誰かが入ってきているか,とか。この部分,相当に不足しているように見えてしまっています。


 ポジション・フットボール,という枠組みは理解できるけれど,この枠組みを徹底できるような状態なのか,という疑問が付きまとっています。トップのエジもサイドに流れている時間帯が比較的多い。エジが流れたあとのポジションを,誰が埋めていくのか。今節は原選手がスターターに入ったことで,2トップ的に動く時間帯も見えていたけれど,やはりゼロ・トップのような状態に陥ってしまった。


 ポジション・フットボールと言っても,緩やかなポジション・フットボールと言うべきかも知れません。ならば,ポジション循環という要素はどうしても落とせない。言い方を変えるならば,誰かがポジションを外れたときに,誰かがそのポジションを埋めるシークエンスがどうしても必要だ,と。柏木選手であったり暢久選手が縦を狙ってこない理由。その理由に戦術的な課題があるように感じますし,この課題をクリアしないと袋小路からなかなか抜け出られないのではないか,と思うところです。