対横浜FM戦(11−09)。

確か,23:00前後の時間帯だったでしょうか。


 相手に対して,「縦」を明確に意識したパスが繰り出されたのは。ポゼッションを基盤とする攻撃ではなくて,シンプルな縦パスだけで相手守備ブロックに対してチャレンジしていく,という形でしたが,「相手守備ブロックを動かす」という意味で効果的だったのは,残念ながらこの形だけに近かったような印象を持っています。


 J's GOALにコラムを寄稿されている,神谷さんも明確に指摘されていますが,相手に対する敬意,などという表現があります。


 当然,相手が展開するフットボールに自分たちが無条件で合わせていく,などという意味ではありません。今節は,こちらの意味で「敬意」を払ってしまった試合,と理解すべきでしょう。


 そうではなくて。意図するところは完全なる逆方向です。


 自分たちのフットボールだけを意識するのではなくて,「相手がどう出てくるか」をしっかりと理解する,という部分を意識しておかないといけない。相手のフットボールを的確に分析して,相手が得意とする形にどう持ち込ませないか,対策を打つ。そして,どのタイミングをとらえて自分たちのフットボールへと引き込むか,戦術的な約束事を落とし込む。相手を知らなければ,自分たちのフットボールとの相関が理解できるはずもないし,自分たちのフットボールへと相手を引きずり込む,そのきっかけもつかめない。神谷さんが指摘していた要素,今節の浦和にあったとは残念ながら言えない。


 第7節との最も大きな相違点は,この部分に求めるべきではないか,と思うのです。


 テクニカルな部分で考えると,やはり「縦」をユニットとして意識する,という部分を整理する必要があるように思うのです。距離感,という要素が「横方向」に集中してしまう時間帯があまりに多い。トップとウィンガーがフラットな状態で並んでしまう時間帯があり,さらにはSBまでもがフラットな関係性になる時間帯が出てきてしまう。縦を意識してポジションを取り直す動きであったり,縦方向の距離を意識したポジションがチームとして取り切れていないところが気になります。たとえば,ラン・プレイとパス交換が重なっている時間帯が,今節どれだけあったか,と。縦への加速と,パス交換とがしっかりとリンクできている時間帯が今節に関して言えば,あまりに少なかったように思います。狭いエリアでの数的優位で相手を引きつけて,という意図があるのだとすれば,ユニットの「集散」がスムーズさを欠いている。相手を引きつけるためのバランスのまま,さらに攻撃を組み立てていこうとするタイミングに入ってしまうから,結果的に関係性が「横」だけを意識しているかのような距離になってしまう。これでは,相手守備ブロックを引き出すのではなくて,相手守備ブロックの周辺でトラバースを繰り返すだけ,になる。相手のセンターがポジションを動かして守備応対していた時間帯があったかどうか,という側面から考えても,今節の戦い方には「不足しているアイディア」があった,と言うべきかな,と感じます。昨季以前から共通する課題,という言い方もできるのですが,ビルドアップから相手へのチャレンジ,というタイミングで仕掛けの速度を上げきれない(もともとが速いから,落差が小さい)という課題を含め,昨季から積み残しの課題がまだまだあるな,と感じるところです。


 そして,第7節と違うこと。


 「相手がどう出てくるか」を意識した対策を打っていないこと,でありましょう。第7節は,相手が狙うフットボールを封じながら,相手が仕掛けたいようなフットボールで相手を抑え込んだ。「相手のフットボール」を意識して,自分たちがどのようなフットボールをすべきか,組み立ててきたように感じるのです。そのような過程が今節,あったのかどうか。


 相手が今季,どのようなフットボールを意識しているのか,そのフットボールに対してどのような対策を打つべきか。


 自分たちのフットボールをどの部分で微調整するか,そのポイントを見いだすのが相手へのスカウティングだろう,と思うのですが,今節はスカウティングと自分たちのフットボールとの関係がどうもおかしかった。相手は,自分たちのストロング・ポイントを引き出すために相手のストロング・ポイントを潰すところからはじめよう,とするフットボールを指向している。ある意味,岡田さんの頃のフットボールに戻ってきたようなやり方です。そのときに,真正面からこのやり方に対峙するのがどれだけ難しく,チカラが必要か。


 戦術的な軸までを相手に合わせて変更する必要は,必ずしもないと思うけれど,その軸に至る道筋を相手に応じて柔軟に変更していかないと,軸を表現する前に相手の術中に嵌り込む。今節はテクニカルな部分以前の問題として,第7節でできたことをしなかった,という準備の問題があるように,個人的には感じられます。