対仙台戦(11−08A)。

「している」か,それとも「させられている」のか。


 現象面で同じであっても,意味合いはまったくと言っていいほどに違います。さらに,しているにせよ,させられているにせよ,このことについて明確な対策,アイディアを持っているのであれば問題は小さくなるのですが,残念ながら問題が小さくなることはなかった。「先祖返り」のような問題解決法を取るのか,それとも昨季以前のエッセンスを応用しながら打開策を見いだしていくのか。


 ユアテックでのアウェイ・マッチな仙台戦であります。彼らにとっての本拠地初戦,ということもあり,心理面でこの試合を説明してしまいたくなりますが,むしろ今季の戦い方を左右する,重要な戦術的なレッスンとして考えるべきかな,と思います。ということで,基礎的な戦術要素に絞って書いていくことにします。


 しているのか,それともさせられているのか。


 お察しと思いますが,ボール・ポゼッションであります。ボールをしっかりと保持しながら,相手の隙をどのようにして突いていくか,と。昨季以前,課題として提示され続けながらなかなかクリアまでたどり着けなかった,重要な戦術課題を今節も提示された,と言うのがフェアかな,と思うのです。そして,指揮官はシンプルにロングレンジ・パスでの局面打開を意識しているように見える。果たしてそれだけか,と。


 「狭いエリア」をなかなか使い切れていないな,と思うのです。


 昨季以前から課題になっていたのは,狭いエリアでの数的優位を生かし,相手守備ブロックにチャレンジをしていくタイミングであり,そのイメージがどれだけ共有できているか,という部分だったと思うのです。数的優位を構築することで,オープンサイドへの展開も意味を持つし,狭いエリアからのパス・ワークも意味を持っていくはずなのですが,この局面での約束事が整理しきれなかったし,約束事が描ききれていなかった。その影響が今季にも反映してしまっているように,個人的には映るのです。確か,プレミアの戦い方を見ながら,リズムの落差を激しくしてほしい,というリクエストを書いたのでした。バックパスを繰り出そうが,緩やかなトラバースを低いエリアで交換していようと構わないのだ,と。自分たちが焦れるのではなくて,相手が焦れるところを狙ってほしい,と。そのとき同時に思ったのは,ブラインドを突こう,というタイミングを「チームが」つかみきれていない,というのが戦術的な課題かな,ということです。ギアを落として攻撃を加速させようとする,そのときの速度の落差がちょっと少ないし,さらにはパスを引き出すための距離感があまりよくないように感じます。ボールホルダーとパス・レシーバとの距離感が広がり気味だから,リターンを引き出しながら相手守備ブロックの隙を突く,というようなシークエンスがなかなか表現できない。


 ポジション・フットボールを維持しながら,狭いエリアを意図してつくるのと同じような効果を,と思えば,相当な「基礎的な能力」が必要になるし,パス精度も飛躍的に高度なものが要求されることになる。島崎さんも指摘するところですが,果たして現実的でしょうか。


 前節的な戦い方「だけ」ができるならば,それはそれでいいのですが。


 現任指揮官も指摘するように,「引いて構えてくる」相手に対してどう戦うか。今節が典型だったように思います。狙っているかいないかにかかわらず,ボールを保持しながら相手を崩しにかかることが求められる。そのときに,チームとしてどのような約束事を描くべきなのか。


 ちょっと不思議な感じもしますが,昨季以前の課題がそのまま今季の課題としても浮上してきている。浦和のフットボールを,より安定したものとするためには避けて通れない課題である,ということを示しているようにも思います。