対名古屋戦(11−07)。

ファイナル・スコアから見れば,理想的なリスタート。


 ではありますが,あくまでも2/34が終わっただけ,なのも間違いありません。第1節と比較して考えるならば,戦術的な再調整ができてきた,とも言えるのですが,まだまだ調整を必要とする要素は残っているように見えます。「勝ち点3」が奪取できているゲームだからこそ,冷静に戦術的な課題をチェックしておくことも重要かな,と感じます。


 さて。いつも通り1日遅れでありますが,名古屋戦であります。タイトルにはいつも通り,シーズンを示す数字と,何節かを示す数字を書き込んでいるのですが,実際には第2節なのに数字的には第7節,という部分に今季のイレギュラーさが感じられるところです。


 では,「勝ち点3」を奪ったゲームではありますが,あえて戦術的な課題かな,と感じる部分からはじめてみようと思います。端的に書いてしまえば,ゴールキックからのリスタート,その扱いがあまりにももったいない,と思うのです。


 ゴーリー・サイドから見たときの問題点としては,ターゲットに必ずしも正確にボールが供給できない局面がちょっと多い。好意的に解釈するならば,ボールの軌道から狙っているポジションがどこなのか,ある程度はイメージできるけれど,結果的に見れば相手へのプレゼント・パスになってしまうケースがいささか多い。対して,ボールを収めるべきターゲット・サイドから見ると,ターゲットが相手と競ってイーブンになりかけるボール・コントロールを高い位置で確保する,という形がなかなか描き出せない。そもそも競っていない局面も確かにありますし,ボールへのアプローチ,その駆け引きで後手を踏んでいる局面もあるか,と思うのですが,いずれにしてもゴールキックからのリスタートで,ターゲットがボールをしっかりと収めて,という局面はいささか少なかった。


 後半,2ゴールのビハインドを背負っている相手は,立ち上がりの時間帯から攻撃面での圧力を高めてきます。主導権(あるいは「流れ」),という部分で考えれば,相手が主導権を掌握する側に立っていて,相手が動かしているゲームを守備応対によって何とか自分たちのリズムへと引き戻そうとする,という構図の時間帯に,しばらく嵌り込んでいたような印象です。そのときに,マイ・ボールからリスタートするタイミングが何度か訪れるわけですが,ボール・コントロールを再び相手に譲り渡す結果になってしまう。ボールを自陣ゴール近くのエリアから可能な限り遠ざける,という意図だけでフィードを選択してしまっているのだとすれば,いささかもったいない話だし,イーブンからのリスタートと言うよりも,(厳しく言ってしまえば)せっかくボール・コントロールを取り戻した状態から再びボール・コントロールを相手に譲り渡す,それも自分たちから譲り渡してしまうことになってしまう。


 ゴールキックから,自分たちの攻撃をどのようにして構築していくか。


 戦術的なパッケージを微調整することで,攻撃ユニットの距離感を最適化する方向へと動かしてきたチームならば,この部分に関しても何らかの回答を導けるはずだと思っています。


 対して,ポジティブな部分でありますが。


 直前のエントリで書いた部分とは違った要素を書くと,「リズム感」でありました。


 たとえば,相手ボール・ホルダーへとアプローチを仕掛けていくときのリズム感は,チームとして「描くべきイメージ」が相当程度共有されているな,と感じる部分です。当然,プレッシングの仕掛け方はチーム戦術の基礎的な要素として落とし込まれているはずです。それだけではなくて,基礎的な要素が「相手」という存在としっかりつながっている。「自分たちの戦術」という部分に意識が傾きすぎてしまえば,その戦術を相手に対してどう使うか,が不明確になりがちにもなる。自分たちの戦術を,相手に合わせてどう動かすか,というバランスをつかみつつあるな,と思ったわけです。
 相手がどのようなリズムでボールを動かすか,そのときに鍵を握る動きがどのようなもので,誰がそのシークエンスに深く関与しているのか,などの要素と,自分たちが狙っていくべきフットボールをバランスさせる,その意識がしっかりと束ねられている。そのために,戦術的な約束事が「自分たちだけ」で止まることがなく,しっかりと「対・・・」な約束事として機能させられる。いい意味で,「柔軟性」を感じられるようになってきているな,と思うのです。今節の相手は,11スペックな浦和と同じくウィングの機能性が攻撃面での鍵を握っているし,トップがボールをコントロールできるだけの時間を与えてしまうと決定的な局面をつくられてしまうことにもなる。そして,昨季のフットボールを想定する限り,中盤でのビルドアップから攻撃リズムを,というよりは,比較的シンプルな組み立てから相手を揺さぶる傾向を持っている。ボール・コントロールを失う位置が中途半端に高ければ,そして,ファースト・ディフェンスに入るタイミングが悪くなれば,なかば自動的に相手のリズムでゲームを動かされることにもなりかねない。そうならないために,どのようなファースト・ディフェンスが求められるのか,(ちょっとラグビーフットボールな用語ではあるのですが,ちょっと使わせてもらうと)エリア・マネージメントが必要なのか。個別具体的な戦術イメージと,基盤となる自分たちの戦術的な要素をしっかりと組み合わせられたことで,今節のリズムが生まれたかな,と思うのです。


 と,いつも通り(ということは,試合の流れはほぼ書かず)書いてきましたが。


 こういうことがいつも通りに書ける,つまりはフットボールが日常に戻ってきた,ということに感謝,という思いを新たにするシーズンであります。


 第1節からの大きなブランクは中断期間,と言うにはなかなかに難しい時間だったと思いますが。


 チームがしっかりとしたトレーニングを重ねてきた,ということがうかがえるゲームだったかな,と思います。ただ,まだまだ荒削りな要素もあるし,ちょっと厳しい言い方をすれば,戦力と戦術とのミスマッチが発生しているように感じられる要素もある。リスタートで,チームを加速態勢へと乗せていくきっかけをつかみかけているタイミングだからこそ,潰すべき課題を的確に,着実に潰していってほしい,と思うところです。