スタート・ダッシュなVK45。

参戦初年度にして,なかなかの存在感でありますな。


 Z33,あるいはGT−Rに搭載され,実績を積み重ねてきたレーシング・エンジンではあるわけで,個人的にもかなり期待してはいたわけです。しかし,それだけに懸念材料もいろいろ浮かぶわけです(担当エンジニアでもないのに)。たとえば,冷却系統の取り回しは大幅な変更を受けます。ラジエターへの導風効率がGT500とは違ったものとなるわけですし,ウォーターラインも当然違う。その違いに対応するウォーターポンプを探り当てられているか。また,駆動系も変更になりますね。「ハコ」なレイアウトに対応するギアボックスではなくて,フォーミュラ・マシン的なレイアウトに対応するギアボックスへと変更を受けることになり,さらにはエンジンそのものが応力を受け止める構造部材として位置付けられることにもなります。その新たなギアボックスが,戦闘力の足枷になることはないか,などなど。


 エンジンのトラブルと言うよりも,補機系のトラブルであったり,マイナー・トラブルが心配でしたし,逆に考えるならば,マイナー・トラブルを潰し切れているならば,かなり「いい位置」を奪うことができるかも知れない,と。そんな期待に,見事応えてくれました。


 さて。今回はNISMOさんのニュースリリースをもとに,LMP2な話をちょっと書いていこう,と思います。


 今回,日産がクラス優勝を飾ったのはLMS(ル・マンシリーズ)第1戦,ポールリカール・ラウンドであります。ちょっと前にHPDに絡めてエントリを書いたセブリング12時間は,同じスポーツ・プロトタイプで戦われるシリーズでありますが,こちらはILMC(インターコンチネンタル・ル・マンカップ)でありまして,実際には違う選手権なのであります。


 それにしても,なかなかのスタート・ダッシュだな,と思いますね。


 日産のリリースを読むと,ILMC開幕戦であるセブリングでは,残念ながらギアボックスの電気系統にトラブルが複数回発生したようです。そのために,ローラホンダ(ということは,前回扱ったHPDのマシンでありますね。)にLMP2クラス首位を譲ることになった,ということですが,それでもクラス2位を確保してきているわけです。やはり,マイナー・トラブルなかりせば,勝負権を持っていると言って差し支えないレーシング・エンジンだな,と。そして,LMSで勝負権を持っていること,少なくともひとつのラウンドを獲りに行くための勝負権は間違いなく持っている,ということを証明したわけです。


 第2戦はILMC/LMS双方の選手権がかかったラウンド,スパ・フランコルシャン6時間であります。フォーミュラ1をホストするサーキットでもあり,ご存じの方も多いかと思いますが,相当な高低差を持っていますし,なかなかにチャレンジングなコースであります(とは言え,かつての迫力は「安全性確保」によってそれなりに丸められてはいるのですが。)。BNR32が,グループA規定で戦われた24時間耐久でポディウム中央に立ったことのある舞台でもあります。日産勢にしてみれば選手権への勝負権を持っているのかどうか,真価を問われるラウンド,となりましょうし,サルテへの流れをつくるためにも重要なラウンドでしょう。楽しみにしたいと思います。