三洋電機ワイルドナイツ対サントリー・サンゴリアス戦(第48回(10〜11)日本選手権・決勝戦)。

サンゴリアスは,攻撃的であると。


 なるほどね,と思います。ちょっとばかり,かつての東芝府中を思い出させるような攻撃スタイルです。5mを割るか割らないか,というエリアでの守備応対からボール・コントロールを取り戻すと,この深いエリアからボールを展開しながら「縦」を狙う。彼らのスタイルは確かに印象的ですし,その攻撃スタイルが奏功してもいるわけですが,個人的には攻撃へのスイッチに切り替わる,その前段階の安定性,と言うか鋭さがこの試合での鍵でだったかな,と思います。


 いささか時期に遅れましたが,ラグビー・シーズン最後の試合であります。


 リーグ・チャンピオンという称号を争ったクラブが,そのままカップ戦決勝戦でも顔を合わせるという形であります。であれば,「心理面」が試合の鍵として作用したようにも感じますし,その心理面がフィールドに「守備応対」という形で表現された,という印象を持っています。では,手短に印象を書いてみます。


 サンゴリアスが,どんなゲーム・プラン(と言いますか,試合の入り方)をイメージしてきただろうか,と推理しますに,恐らくはワイルドナイツよりも鋭く守備を仕掛けよう,ということを徹底していたのではないかな,と。


 このゲームを通じて,ボール・キャリアへのアプローチは安定して速かったですし,ボール・キャリアへアプローチを掛けたあとのサポートも効果的に表現できていた。そのために,接点にウェイトを置かずとも,ボール・コントロールを奪い返すことができていたし,「ひとをかけなくていい」ことで,ボールを引き出したあとの仕掛け方に幅が生まれることになる。SOが持っているイマジネーションをしっかりと攻撃ユニットが理解しているから,ある種の確信を持って「縦」を狙った動きができるし,ギャップを突く,という意識も徹底されていた。サンゴリアスが熟成させてきた攻撃面での約束事,を強く感じさせるゲームでもあったわけですが,そんな攻撃面を存分に表現させるための「前提」が,このゲームでは安定して表現されていたように思うわけです。
 

 思うに,トップリーグでの教訓が生きているのでしょう。


 基本的な流れは選手権の決勝戦と同じ,という見方も成立するでしょう。時間帯を限定してみれば,ある種の相似形,と言うこともできるかも知れません。しかし。ワイルドナイツにリズムを取り戻されて,結果的にチャンピオンという称号を獲り逃したわけです。そして,ワイルドナイツは何をベースにラグビーを組み立てるか,と考えると,「守備応対」であります。であれば,相手の守備応対でリズムを崩す,というのではなくて,自分たちが積極的な守備応対を仕掛けることでワイルドナイツからリズムを奪おう,と考えるのは自然なこと,であるように思うのです。この意識,見事にこのゲームで表現されていたかな,と思うわけです。攻撃ユニットの,縦への鋭さも印象に強く残るものがありましたが,個人的にはボール・コントロールを奪い返そう,という局面(いわゆる,ブレイクダウンでありますし,接点であります。)での強さ,鋭さがより強く印象に残ったわけです。


 フットボール,という競技に共通する要素,かも知れませんが。


 いい攻撃を仕掛けようと思えば,いい守備を仕掛けることが求められる,と。この決勝戦でのワイルドナイツは,決して守備応対が緩かったとは思わないけれど,同時にサンゴリアスよりも鋭く,厳しい守備応対が仕掛けられていた,と言うこともできない。そんな相手に対して,サンゴリアスの守備は鋭さ,厳しさが維持されていた。心理面も含めたディテール,になるのかな,と思いますが,そのディテールが明確に勝者と敗者を分ける要素になった,という印象であります。