BMWのデザイン・トレンド(ビジョン・コネクテッドドライブ)。

ひとつひとつのディテールは,確かに現代的ですが。


 全体から受ける印象は,意外に古典的なものでもあるな,と感じます。ロングノーズ,というディメンションからの印象でもあるのですが,デザイン面からも古典的な要素が感じられるように思うのです。


 さて。今回はフットボールを離れまして,webCGさんのニュース記事をもとに,BMWスタディ・モデルについてちょっと書いていこう,と思います。



 このスタディ・モデル,シャシー・エンジニアリングやパワー・トレインなどを提案するものではなくて,クルマにまつわるソフトな技術を提案するものであります。ネットワーク環境とクルマをつなぐことで,ドライヴァに便利な情報を提供したり,ドライヴァの運転を効果的にアシストしよう,という技術を提案するものである,とのことです。でありますが,個人的にはBMWのデザイン・トレンドという側面からこのクルマを眺めてみよう,と思うわけです。


 まず,印象的なのがフロント・セクションであります。


 当然,ショー・モデルでありますから,なかなかのコスメティックであります。そのコスメなディテールを外していくと,クリストファー・バングル以前のBMWにも共通するようなデザイン・キューを感じられるように思います。たとえば,エルコーレ・スパーダがデザイン・ディレクションを担当していた時期の7は,それまでのBMWデザイン,その文法を踏襲するように逆スラント・ノーズを採用していました。恐らく,この時期が逆スラントを明確に感じさせる最後の時期で,ここからBMWも空力面を意識したフロント・セクションへと変わっていくわけですが,今回のスタディ・モデルは過去,BMWが採用してきたデザイン要素を持ち出してきたように思うわけです。BMWを特徴付けるキドニー・グリルは相当に大型化されていて,かなりの主張でありますが,なかなかに基本的なフォルムはエレガントなものだな,と思います。


 また,クリストファー時代には特徴的なプレス・ライン,たとえばZシリーズでは,そのものズバリ,Zをイメージさせるようなプレスラインがデザイン要素として織り込まれていたサイドも,ウェッジ・シェイプ(くさび形)であること,動的なデザインであることを強く印象付けるようにシンプルなプレスへと変化が出てきています。それでいて,フロント・フェンダー部分はプレスを巧みに組み合わせることで,Z3やMロードスターで採用していたフェンダー・フィンを思い起こさせるようなデザイン処理を施しています。


 面構成,という部分では明確に現代性を感じさせつつも,ディテールでは逆に「古典」(と言いますか,自分たちの歴史)を上手に利用している。BMWのデザインを束ねている,エイドリアンがどんなことを意識してデザインを変化させようとしているのか,その一端が読み取れるようなスタディであるように,個人的には感じるところです。近い将来リリースされるモデルに,ともすれば今回のスタディに見られたディテールが落とし込まれる,かも知れません。