2019と国立霞ヶ丘改修と。

いささか予想外な方向から話が出てきたな,と思うけれど。


 反面でごく当然の流れではないか,と思うのも確かです。


 今回は,こちらの記事(スポーツナビ)をもとに,ラグビー・ワールドカップと国立霞ヶ丘の話を書いてみよう,と思います。


 いささか知名度が低いのでありますが。


 2019年のラグビー・ワールドカップの開催国なのであります。2002年のように,エールをそこかしこで飲みまくるイングリッシュな皆様、ギネスのふるさとなアイリッシュさんなどが,恐らくはお越しになるわけです。そこで問題となるのが,決勝戦をどこで,という話でありまして,ラグビー・ワールドカップ議員連盟は国立霞ヶ丘の改修を決議したのだとか。当然,閣議決定でも何でもないので,拘束力はないのですが,何らかの動きが出てくる,そのきっかけにはなるだろう,とは思います。


 しかし。改修とは言ってみたところで課題はいろいろとあるな,と思うのも確かです。


 たとえば,この記事では触れられていない,陸上競技との関係性です。


 「国立」という名称が冠された競技場は,限られています。しかも,1964年にオリンピックをホストした競技場でもあります。それだけに,改修手法としてトラックを潰してセイン・ピスタ化する(フットボール関連だけに最適化する),というのはなかなか難しいだろう,と。JRFUの会長である森さんは「日本のスポーツ界のために」とのコメントをしていることがこの記事からも受け取れますし,となると,恐らくトラックを残す方向性での改修を念頭に置いているのでしょう。


 では,トラックを残す形での改修と仮定してみても,技術的にクリアすべき問題は複数指摘できるように感じます。


 国立霞ヶ丘は現状において,IAAF,JAAFの公認期間が切れた状態です。競技場としての規模だけを見ればクラス1,あるいは第1種に該当するはずですが,現行規定で考えると複数クリアできていない項目が見つかります。たとえば,9レーンを要求されるところを8レーンが確保されるにとどまっていますし,決定的なのがサブ・トラックの不足です。かつては東京体育館に設置されている小さなトラックをサブ・トラックとして位置付けることでこの規定をクリアしていたようですが,現行規定の第1種に再適合させようと思えば,しっかりと国立霞ヶ丘と同規模のサブ・トラックを新設する必要性が出てきます。それだけのスペースをどのようにして確保するのか。議連総会に出席された文科副大臣の発言にもありますが,周辺の都市計画にも大きな影響を与える話です。加えて,競技場そのものの改修にもクリアすべき課題は多いものと感じます。IAAFやFIFA,あるいはIRBが要求する基準を充足させようと思えば,観戦環境,という側面から座席ピッチや通路の広さなど,細かい要求をひとつひとつクリアしていかないといけないですし,そうなると現行レイアウトを微調整,程度では大幅なキャパシティ・ダウンが免れないところでしょう。VIPボックスも大幅に増設しなくてはならないし,ロッカーも大改修の必要性が出てくる。そうなったときに,果たして現行の敷地面積だけで対応しきれるのか。やはり,周辺の都市計画と絡んでくる要素が見えますし,となれば,いまから動き出してもリード・タイムはそれほど多くない,と見るのがフェアかな,と個人的には思うところです。


 ただ,同時に思うこととして。


 古色蒼然とした雰囲気は悪くないけれど,現代的なホスピタリティからは外れてしまった(残念ながら,取り残されてしまった)国立霞ヶ丘が,現代的な姿へと生まれ変わる,絶好のタイミングなのかも知れない,と思うわけです。そのままの姿で残すというのも一策でしょうが,競技場は使われてこそ,だと思いますし,全体のイメージをうまく残しながら現代的な姿へ変えていく,というやり方はベルリンのオリンピック競技場で示されてもいるはずです。それだけに個人的には,しっかりとした改修計画策定に向けた「呼び水」であってほしい,と期待しています。