トヨタ自動車ヴェルブリッツ対三洋電機ワイルドナイツ戦(TL・POT)。

端的に書けば,意外なゲームでした。


 どちらのゲームになるとしても,僅差の範囲に収まるゲームになるのではないか,と思っていたのです。それだけに,ヴェルブリッツを巧みに抑え込んだワイルドナイツ,彼らの守備応対が印象に残るのです。


 派手に時機を外して申し訳ありません,な話題でありますが,23日の第2試合,プレーオフ・トーナメントであります。豪快に時機を外しまくっておりますので,雑感程度に振り返っておくことにします。


 さて。ヴェルブリッツがリズムを掌握できなかった要因を考えてみるに。


 ボールを自分たちのリズムで引き出せていなかったこと,に求めるべきか,と感じます。いわゆる,“Bad Ball”に追い込まれる時間帯が多かった。ボール・コントロールを奪われなかったとしても,ボールを引き出すまでの「時間」が掛かってしまう。当然,時間が掛かってしまえば,相手守備ブロックの隙を突こうにも相手守備ブロックに隙が生まれる可能性が低くなるし,攻撃面での選択肢が狭くなっていってしまう。ボール・キャリアへのアプローチ,その速さであったり鋭さに対して,ヴェルブリッツが有効な対抗手段を打てなかったこともあって,ワイルドナイツの守備応対に対して,後手を踏む時間帯が多かった,という印象なのです。


 このことを,ワイルドナイツから見てみれば。


 BKであろうと,積極的に局面でボール奪取に関わっていく,という「らしさ」が戻ってきたな,と感じるところです。ワイルドナイツがどの部分でリズムをつくっているか,と考えると,やはりボール奪取の局面かな,と思うのです。当然,その前段階としてしっかりとしたボール・キャリアへのアプローチが求められますし,アプローチからボール奪取へ,というタイミングでの集散の速さ,鋭さが積極的な守備応対,攻撃面でのリズムをつくるための基盤だろうと思うのです。
 また,エリアをどのようにして奪っていくのか,という戦術面でワイルドナイツらしさが戻ってきたかな,という印象もあります。キックを有効活用できていると同時に,しっかりとした守備応対が繰り返せていること。そんな部分が,ワイルドナイツのコンディションを測るひとつのスケールかな,と思いますし,ヴェルブリッツとのゲームでは,安定して表現ができていたような印象です。


 最終節の印象とは,いささか違うゲーム。


 そんな言葉がスタンドから聞こえてくるような試合でした。確かに,そのような印象を持っても不思議のない試合ではありました。ありましたが,個人的にはヴェルブリッツが最終節で「タマ」をそれなりに見せてしまったような気もするのです。ワイルドナイツは,最終節での勝ち点よりも,プレーオフ・トーナメントをどのように戦うかに意識を切り替え,「タマ」を残していたような印象もあるのです。タマを見せきってしまったがために,これまでのトーナメントでは苦杯を嘗めてきた。その反省に立って,戦い方を組み替えてきた,という印象を持つわけです。
 そして,決勝戦での対戦相手は,数季前に後塵を拝したサンゴリアス,であります。彼らの戦い方に嵌り込んだことで,自分たちのラグビーを表現する,そのきっかけを失った。そんな過去を思えば,そして秩父宮でのこの試合を思えば,ワイルドナイツがどのように戦い方を組み立てるべきか,ある程度の設計図は描けているはずです。


 レギュラー・シーズンをトップで通過したクラブが決勝の舞台に残っていない,という部分に違和感を感じながらも,面白い試合を期待したい,と思います。