北海道バーバリアンズ対タマリバクラブ戦(第18回全国クラブ大会・決勝戦)。

ある局面だけを取り出せば,印象は異なる。


 スタッツのある側面を取り出しても,やはり印象は異なる。でも,「ある側面」は部分に過ぎないわけです。部分と全体の印象が違っていても,結果は全体から導かれるわけです。ちょっと謎かけのようですが,そんな印象を受けた試合でした。


 相変わらず遅筆堂なエントリでありますが,23日に開催された全国クラブ大会,その決勝戦であります。この時期,秩父宮には国立霞ヶ丘方向から伊藤忠方向へと吹き抜ける季節風が付きものだったりするのですが,この日の秩父宮季節風の影響をほぼ考慮しなくていい,そんなコンディションでありました。


 さて。まずは“Runner-up”である北海道バーバリアンズの印象でありますが。


 端的に言えば,もったいない試合だった,というのが個人的な印象です。立ち上がりの時間帯,試合を最初に動かしたのは確かにタマリバだったのですが,前半を冷静に眺めてみれば,バーバリアンズが試合を動かしていた時間帯が多かった。「縦」への強さであり,鋭さをよりフィールドに表現していたのはバーバリアンズである,と言うのがフェアだろう,と思うのです。
 ですが,この段階から気になっていたのがペナルティ,であります。バーバリアンズが表現していた強さであり鋭さが,裏目に出る局面が潰し切れていなかった。そのために,トライ奪取数では2−0と,明確な差を付けていながら,実際には前半終了時での得点差は,僅かに3点にとどまってしまう。この試合での鍵,そのひとつはタマリバに攻め込まれたときの対応,ということになるか,と思います。


 2つめの鍵は,後半開始直後からの時間帯でしょうか。


 この時間帯を,バーバリアンズは自分たちのリズムでコントロールすることができなかった。前半段階ではトライを奪えなかったタマリバが,後半開始直後の時間帯から2連続でトライを奪取,試合のリズムを引き寄せにかかる。どこか,後半開始から「受けた」部分があるような,そんな印象です。


 そして,最後の鍵は試合をどうクローズするか,という部分になるでしょう。


 タマリバにリードを許したあと,トライ奪取によって再び試合の主導権を奪い返していく。ここからの対応が,チームとしてどうだったのだろう,と思うのです。攻撃リズムを崩さずに押し切るのか,それとも相手の攻撃を抑え込む方向にチームをシフトさせるのか。戦術交代を含めて,どうも中途半端な状態になってしまったように感じますし,ひとつ目の鍵にもかかる話ですが,相手のキック・レンジでペナルティを与えてしまう。


 ポテンシャルとして,トップを狙えるだけのものを感じさせながら,ディテールの「詰め」で獲り逃してしまった,というような印象を個人的には持ちます。


 では,優勝を飾ったタマリバでありますが。


 チームとして,「勝つため」に何が必要で,何をすべきか,意識がしっかりと束ねられているな,という印象を強く持ちました。自分たちの戦力と,相手の戦力を冷静に比較することで,どのような戦い方をすべきなのか,逆にすべきではないのか,見極めた状態で秩父宮のフィールドに入ってきたような,そんな印象を持つのです。


 そんな姿勢は,立ち上がりのPG段階で何となく感じるところでした。


 決勝戦を戦っているわけですから,無理にトライ奪取を狙うことで逆襲を受ける,などという事態を避け,しっかりと得点を積み上げていくのは当然ではあるのですが,個人的にはバーバリアンズのボール奪取,その鋭さを意識した戦い方を選択しているように受け取れたのです。無理に攻撃リズムを強めて,相手の術中に無防備に嵌り込んでいくのではなく,相手のリズムに「決定的に」落ち込むことのないように巧みにコントロールしていくような,そんな戦い方を特に前半はしているように映りました。


 その姿勢が変化するのは,後半立ち上がりの時間帯だったでしょうか。


 ボール奪取から攻撃へ,というリズム感がバーバリアンズのリズムではなくて,タマリバのリズムだった。仕掛けるべき時間帯を,後半開始直後にセットしていたのかな,と思わせるような,そんな立ち上がりによってバーバリアンズを,「受ける」状態へと追い込むことができた。そして,この時間帯にトライを奪取できたことが大きな要素だったかな,と思うところです。
 ではあるのですが,ここでこの試合は収まらなかった。やはり,バーバリアンズのボール奪取にリズムを奪われることになります。そのときに,冷静さを失うことなく,試合の流れを再びつかむ姿勢を維持できたこともまた,大きな要素だったように感じます。


 ストロング・ポイント,という側面で明確さを持っているのは,恐らくバーバリアンズではなかったかな,と思います。ですが,そのストロング・ポイントは「荒削り」な印象を合わせ持つものでした。対してタマリバは,チームとしてどのように戦いを進めるべきか,明確なイメージを共有できているという「強み」を感じさせた。


 決勝戦ともなると,単純に要素を積み上げていくだけでは足らなくて,各要素をどのように繋ぎ合わせていくのか,「詰め」をどれだけ丁寧にできるか,も問われることになる。そんなことを感じる試合でありました。