対カタール戦(AFCアジアカップ2011)。

ブルーノ・メツは,どの時期のバルサを意識してコメントしたか。


 いずれにしても,ポジティブなようでネガティブな意味を込めているのは確かでしょう。要は,リアルに脆いのではないのか,と。千田さんは,ブルーノ率いるカタールインテルと表現していたけれど,それは要するに,ブルーノは自分のことをジョゼと重ねている,ということになりましょう。


 ならば,忘れていることがあるように思いますね。バルサはリアルな相手を「常に」苦手としている,わけではないと。確かに,バルサを自分たちが描くゲーム・プランへと引きずり込んだイメージは強いけれど,そのゲーム・プランを真正面から打ち破られたことも確かあったはず。そちらのイメージはどう考えていたのだろう,と。


 もちろん,ブルーノのコメントはある時間帯には,確かに当たっていた,かも知れません。彼らが用意したゲーム・プランに自分たちから嵌り込みかけた,かも知れない。しかし。嵌り込みかけて,そこからしっかりと抜け出してきた。しかもショートハンドになりながら。新たなチーム・ビルディングをはじめた段階で,ここまでの負荷がかかる試合を経験できた,しかも「あと2ゲーム」を保証できる位置へとチームを引き上げてきた,というのはすごく大きな収穫であるように感じます。


 アジアカップであります。カタール戦であります。


 さて。この試合の鍵となったのは「リズム感」であり,心理面ではなかったかな,と思います。


 立ち上がりの時間帯,どこかリズム感が悪かった。ごく大ざっぱに言えば,相手のリズムに合わせてしまったようなところが感じられました。たとえば相手からボール・コントロールを奪い返す(ボール奪取を仕掛ける)としても,奪った局面からスムーズに自分たちのリズムでボールを引き出せない。ラグビー的な表現となりますが,“Bad Ball”状態だったなと思うのです。
 反面で,相手はどのような形でボールを奪うか,かなり明確にイメージを持って試合に入ってきたな,と感じます。それだけに,先制点を奪われた局面はほぼ相手の描くフットボールを正確に描かれてしまったような,そんな印象を持ちました。
 しかし。ここでチームは落ち着いていたな,と感じます。沈み込むでもなく,不必要にラッシュを仕掛けるでもなく。自分たちのリズムが消えてしまっていること,相手にリズムが傾いてしまっていることを冷静に捉えて,そのリズムをまずはニュートラルに,そして自分たちの方向へと再び引き寄せようとする姿勢が見えた。ハーフタイムを迎える段階で,まずは50/50の状態へと引き戻せた。


 この流れを,と思ったわけですが,ハーフタイムを挟んでも,どうもリズム感が安定しない。


 強引に,であっても立ち上がりから積極的にリズムを掌握にかかる相手に対して,どうも「受ける」傾向が強い。この試合でも,どこかそんな「受ける」形が見えていたように感じますし,再びビハインドを背負うことになってしまう。
 ただ,このチームの持っている反発力が,得点でのビハインド,加えて数的不利を背負うという意味でのビハインドによってより明確になった,とも感じます。心理的に強い,という言い方もできますが,「冷静に,でも強く」という感じでもあるな,と感じます。決定的な局面に関わっていくための精神的な強さと,そんな局面をしっかりと結果へと結び付けるための冷静さと。そんな要素がしっかりとバランスしていたことで,再び試合を50/50へと戻し,さらには準決勝への切符を奪うゴールへと結び付いていく。


 でき得るならば,こういうドラマティックな展開ではなくて,と言いたいところですが。


 でも。ピッチから感じるところの強い,そんないい試合であったな,と思うところです。チーム・ビルディング初期段階,と言って差し支えない段階で,かなりいい感じに仕上がってきている。しかも,まだまだ高い負荷が掛かってくる試合を,2試合戦うことができる。ほんとに,このチームにとって大きな収穫だと思いますし,その収穫に「結果」が付いてくればさらにいい,と思うところです。