ファースト・ラウンド首位通過(AFCアジアカップ2011)。

実戦を通じてチーム・ビルディングを進められる。


 かなり大きな収穫だろう,と思います。


 代表戦にあっては,どんなフットボールで,という内容面よりも,勝利か否かという要素が重要である,と。確かにその通りではありますが,個人的には100%の状態で結果「だけ」を追い求める時期でもないだろう,と見ています。結果,という要素を強く意識するには,アジアカップの開催時期が悪すぎる,とも。


 チーム・ビルディングという側面で考えるならば,前任である岡田さんが指揮を執ったワールドカップまでがひとつのタームで,アルベルトさんに変わった時点で新たなタームに入っています。ワールドカップを支えたフレームが維持されている部分もあるけれど,アルベルトさんはゆっくりと,でも確実に2014を意識したフレームへとモディファイを加えていくはずです。ある段階では,「新たなフレーム」と表現すべきものへと変化している,とも思います。その,モディファイ第1段階の実戦がアジアカップである,と。加えて書けば,ザックさんにしてもブリーフィングなどで「知識として」アジアなフットボールを理解はしていただろうけれど,テクニカル・エリアからアジアなフットボールを「体感する」貴重な実戦機会であったはずです。
 であれば,厳しい戦いになることもある程度織り込んでいたでしょうし,反面でより多くの実戦機会,チームに高い負荷を掛けることのできる「真剣勝負」をひとつでも多く,という意識もあったはず。というようなことを考えるならば,悪くない勝ち上がり方,と言いますか,ある意味理想的な勝ち上がり方と考えてもいいのではないか,と思うのです。


 と,まとめに入ったかのような書き方ですが。ひさびさに代表な話を書いてみよう,と思います。


 さて。ファースト・ラウンドを大ざっぱに振り返ってみますに。


 初戦のヨルダン戦はやはり,「対アジア」の難しさを再認識させるゲームでありました。フットボール・ネイションズに対してどのように戦っていくか,代表チームにとってのテーゼであるはずですが,同時にアジアなフットボールに対してどのような対抗策を意識しておくか,も重要なテーゼであり続けている,ということかな,と思うわけです。ただ,このゲームでは試合終了を意識しなければならない時間帯で,「勝ち点1」を確保することができた。ファースト・ラウンドを,どれだけ自分たちが主導権を掌握しながら戦っていけるか,という意味で,この勝ち点1は大きな意味があった,と感じます。
 続いて,シリア戦でありますが,まあ何と言いますか。シリアだけを相手に戦っていたわけではないな,と思いますし,ゲーム・コントロールをしようとしているのか,それとも効果的に壊そうとしているのかよく分からないひとに対して,よくセルフ・コントロールを切らさなかったな,というのが正直なところです。ネガティブな意味での“アジアン・クオリティ”を感じさせる,そんなレフェリングが印象に残る試合でありましたが,この試合で積み上げた「勝ち点3」によって,最終戦でのフリーハンド,その範囲は広がったのは確かなことです。


 で,最終戦であります。


 得点差は付きましたが,それもある意味当然かな,と感じるようなゲームでした。


 立ち上がりから,リズムを掌握しかけていたな,とは思うのですが,相手も逆襲を仕掛けるタイミングを狙っているようには見えました。であれば,相手は守備ブロックをしっかりと構えてボールを前線へと供給していくつもりか,と思うところですが,実際には守備応対にブロック,という感覚を持つことはありませんでした。どの位置でボールを奪うのか,攻撃を抑え込んでいくのか,という意図が見えてこなかった。ゲーム・プランにしっかりとした「筋」を感じない,そんな状態だった。
 ですので,早い時間帯での先制点奪取によってリズムを掌握,前半終了の段階でほぼゲームを決定付けるまではいいとして,むしろゲームをコントロールするという意識が強くなり過ぎることでかえってリズムを崩して,相手にリズムを取り戻させるような事態が気になるかな,という感じでした。
 けれど。ザックさんはしっかりとチームをコントロールしてきたな,と思います。前半段階で,ちょっとバランスを意識する方向にシフトしたチームに,攻撃的な姿勢を失わないようなハンドリングをしてきた。バランスの取り直し方などを含めて,なかなか意味のあるゲームだったかな,と思います。


 さてさて。セカンド・ラウンドであります。


 初戦はカタールだそうでありまして,見事なまでのアウェイであります。ありますが,考え方を変えれば願ってもない実戦機会ですし,チームにいろいろな意味での負荷を掛けることのできる試合になるだろうな,と思います。もちろん,「勝って終わる」ためには結果が大事,ですが,まずはチームがしっかりと成長しているということをピッチから感じ取れること,でありましょう。楽しみであります。