都築選手契約満了に思うこと。

微妙な,本当に微妙なバランス。


 そんなバランスで維持されていた関係性だったのかも知れない,といまにして思います。であれば,ちょっとしたきっかけでそのバランスは崩れ去ってしまう,ことになるのでしょう。そのきっかけはやはり,膝の故障だったのかも知れません。


 リーグ戦立ち上がりの段階,スターターのクレジットにも,そしてリザーブのクレジットにも名前を見つけることはできませんでした。であれば,カップ戦とリーグ戦とで役割を分担させる気か,と思ったのですが,カップ戦のクレジットにも名前は見つけられませんでした。それだけコンディションが悪化しているのか,それとも。さまざまな「仮定論」が浮かんでは消えて,という状態だったな,と思い出します。


 そんな時期が過ぎて,ローンというリリースが出された。


 数季にわたって維持されてきた,微妙なバランスの関係性が100%ではないとしても崩れたこと,そして将来的にも崩れたままになるかも知れない,ということを意識させる,そんなリリースだったように感じます。


 であれば,どこかで覚悟のようなものもあったし,反面で淡い,本当に淡い期待感のようなものもあった。勝手な願望,と言うべきものかも知れません。知れませんが,やはりもったいないという思いがあります。100%フィットな状態で,ドロー・ボールのように鋭く放たれるフィードを,もう一度中野田のピッチで見たかった,と。


 今回は,浦和からのリリースをもとにしながら,徒然に思うことを書いていこう,と思います。


 浦和なカテゴリにしながら,ちょっとだけフットボールではない話をしますが。


 昨年のある時期,とある雑誌を手にしました。アメリカン・カルチャーに広くフォーカスを当てる雑誌で,確かそのときはアメリカン・メイドな靴,ブーツが特集記事として扱われていたかな,と記憶しています。その特集でインタビューに答えていたのが,都築選手だったわけです。湘南に在籍,というタイミングでのインタビューだったわけですが,この記事では都築選手がカスタム・オーダーをかけたブーツが複数掲載されていました。そのうち,ひとつのブーツに施されたカラーリングから視線を外すことができませんでした。


 そのブーツを目にしたとき,勝手な思い込みかも知れないし,勝手な言い分かも知れないけれど,いつか浦和というクラブに戻ってきてくれるかも知れない,という思いを持ちました。


 ゴーリーとして浦和に戻る,という形は今回のリリースで100%否定されたわけですが,それならばいつか,どんな形であるとしても(願わくばコーチとして)浦和に戻ってきてほしい,と思わせるものがあります。


 浦和でフットボーラーとしてのキャリアをスタートさせたわけではありません。でも,ブーツをカスタム・オーダーしたときに,都築選手が(意識的であるにしても,無意識的であるにせよ)選んだカラー・スキームは,浦和なトリコロールからホワイトを抜いたものだった。心のどこかに,しっかりと浦和があるのだろうな,と思わせるには十分過ぎるような,そんなカスタム・ブーツだったのです。


 そんな個人的な思い入れは別として。


 まだまだ,フットボーラーとしてのキャリア,特にゴーリーのキャリアで考えれば,ゴールマウスの前から離れるには早過ぎるし,都築選手にとってのインディアン・サマーはもっと先にあっていい,と思っています。であれば,まずは活躍できる舞台が見つかることを願わずにはいられません。低く鋭く放たれるフィードが,どこかのピッチで見られることを。