4−3−3。

オランダとの縁浅からぬ,フットボーラーであり。


 そしてフットボール・コーチでもありますね。確か,コーチとしてのキャリアをスタートさせたフェイエノールトでは,当時の指揮官であるルート・フリットの下でコーチをしていたはずですし,コーチング・キャリアを見てもダッチなクラブとの関係が印象に残ります。そして,ダッチ・フットボールでイメージされるパッケージはやはり,4−3−3である,と。


 再び,浦和な話であります。今回は,ちょっとだけ数字な話をしてみようかな,と思います。


 サッカー専門誌に掲載されているジェリコさんのインタビュー記事。その記事をさらっと読む限りでは,どこかで4−3−3を意識しているようなニュアンスが受け取れました。対して,昨季まで主戦としていたパッケージは,4−2−3−1であります。基本的な発想は4−3−3との相似性を感じさせるものの,ディテールを意識して考えてみると,細かな部分で相違点が出てくるように思うのです。そのディテールをちょっと考えてみよう,というわけです。


 まずは,ミッドフィールドであります。


 昨季までのパッケージでは,セントラルをコンビネーションで捉えていました。阿部選手と細貝選手,であったり,細貝選手と柏木選手であったり。CBとの関係性で考えれば,縦方向にボックスを構成できるパッケージを採用していた,という表現もできるでしょう。
 対して,ジェリコさんが意識している4−3−3を考えると,セントラルの構成が変更される可能性もゼロではありません。純然たる仮定論になりますが,守備的な安定性を意識してセントラルを考えるのであれば,CB的な適性を持ったフットボーラーをフォア・リベロ的に構えさせることもあり得るものと見ています。堀さんがユースに落とし込んでいる4−3−3では,CBとセントラルで構成されるトライアングルを守備ブロックとして意識しているように映るところがあって,その方法論をジェリコさんも持ち込む可能性があるな,と思うわけです。となれば,ディフェンス登録のフットボーラーであっても,セントラルとしてクレジットされる可能性がある。起用法を含めて,興味深いポイント,という言い方ができるかな,と思っています。
 当然,昨季までのパッケージに微調整を加える程度で4−3−3へと入っていくのであれば,セントラルのコンビネーションに大きな変更を加えないことも考えられます。けれど,戦力バランスを考えれば,ミッドフィールドのタレントはアタッキング方向に重心があるとも感じられます。柏木選手に梅崎選手,そして直輝選手と。ではありますが,梅崎選手も直輝選手も,ケガという影に付きまとわれる状態でした。そんな影を振り解けたのであれば,アタッキングのパッケージを100%の状態で判断することになるはずです。「縦」にボールをどうやって動かすか,という発想から視野の広いフットボーラーを低めに,という判断にも理を感じるし。いずれにしても,楽しみなパッケージ要素だな,と思うのです。


 次に,3−1ではなくて,3にする意味でありますが。


 個人的な推論で書けば,恐らくはコンビネーションではないかな,と思います。


 つまり。トップとの関係性を強く意識付けると言うよりは,アウトサイドとの関係性を強く意識付けていくつもりではないかな,と思うわけです。昨季までのパッケージでは,3トップと言うよりはやはり,1トップにシャドーが距離感を維持して,というイメージだったか,と思うのです。でありますが,シャドーであるならば,トップからボールを引き出すための動きがあっていいと思うのだけれど,その動きが決定的に不足する,そんな局面がいささか多かった。もちろん,ボールを収めてくれるはずのトップが,確実にボールを収めて動き出しを待てるという形に持ち込みにくかった,という事情も作用していますが,ネガティブな意味でポジションを崩さないフットボールに嵌り込む時間帯が多かった。また,攻撃の組み立て方として,サイドへの意識付けは徹底していたとは思うのだけれど,サイドで物理的な数的優位を構築して,主導権を奪っていくというところにまで徹底しているとは感じられませんでした。トップが,ボール奪取ポイントとして狙われているという部分,あるいはサイドを攻撃の重要なポイントとして意識しているとしても,流動性を持たせているために中途半端な数的優位(あまりにアンバランスな数的優位)になる,というネガティブを潰し,同時に縦へと仕掛けていけるタレントを生かすために,コンビネーションの基盤をトップではなくて,サイドに置くつもりかな,と考えるわけです。


 もうひとつ考えるには,「斜め」の主導権でしょうか。


 昨季までのフットボールでは,どういうわけか「斜め」で相手守備ブロックにチャレンジしていく局面が少なかったような印象です。サイドからの攻撃は,不思議と縦に守備ブロックにチャレンジしていって,かなり深めの位置からのトラバースという形が多かった。この形も当然重要ではあるのですが,オルタナティブがあるから,この選択肢が意味を持つ,とも思うわけです。斜めに相手守備ブロックに対して仕掛けていく,そんな適性を持ったフットボーラーもいるわけですから,4−3−3にも可能性がある,と考えたとしてそれほどの不思議はないな,と。


 さてさて。ジェリコペトロヴィッチはどのようにファースト・チームを観察し,昨季までのパッケージに理を感じるか,それともイメージする4−3−3に踏み込んでくるか。楽しみにしたいと思います。