早稲田対帝京戦(第47回(10〜11)全国大学選手権・決勝戦)。

2連覇に相応しい,そんなボール奪取でありました。


 局面な話ではありますが,この局面な話が帝京のゲーム・プランを支える重要な基盤だったように感じますし,試合を決定付ける要素として作用したように,個人的には感じます。ということで,今回も楕円球方面なフットボールであります。国立霞ヶ丘で戦われた,大学選手権の決勝戦であります。


 まずは,“Last Loser”に敬意を表して早稲田の話から。


 ごく大ざっぱに言ってしまえば,自分たちのリズムでブレイクダウンからボールを引き出せた局面が少なかったな,と思います。


 それでも,ボール・コントロールを維持できていればいいわけです。スローダウンさせられるとしても,攻撃を継続することはできるわけですし,エリアをちょっとずつであろうと奪うこともできる,かも知れません。でも,この試合での早稲田は,ブレイクダウンでボール・コントロールを帝京に奪われる局面がかなり多かった。それだけ帝京の守備応対は速く,そして鋭かったということになりましょうが,自分たちのリズムでラグビーを組み立てることができなかった,エリアをターンオーヴァによって奪回されてしまう,というのはこの試合での大きな鍵ではなかったかな,と思います。早稲田というチームが持っているポテンシャルを思えば,いささかフィールドに表現できたパフォーマンスは中途半端に終わってしまったように感じます。けれど,ブレイクダウン,という局面で帝京の後手を踏んだことで,結果として試合そのものにおいても後手を踏んでしまったことで,自分たちが表現すべきラグビーを表現できなくなった,というのも確かなことではないかな,と思います。


 対して,帝京の話をすれば。


 冒頭にも書きましたが,ボール奪取が大きな鍵だったな,と思います。それだけ,帝京の守備応対は速く,鋭かったですし,明確にボール・コントロールを奪い返すところまで意識して守備応対に入っていたな,と感じます。アソシエーションなフットボールならば,ハーフコート・カウンターを仕掛けるための鋭いプレッシング,などと表現したくなる守備応対ですし,ジャッカルという言葉を持ち出しても決しておかしくない,そんな守備応対を繰り返していたな,と感じるところです。そして彼らは,ボール奪取からエリアを奪い返す,という部分でも意識をしっかりと束ねていたな,と感じます。相手がひとをかけて攻撃を仕掛けている,当然,その背後にはしっかりとスペースができるわけですが,そのスペースを意識してエリアを奪いにかかる。そんな攻撃が,この試合ではかなり効果的だったように感じます。
 加えて,攻撃面ではモールを相当強く意識して試合に入ってきたな,と感じるところです。モールを積極的にドライブすることで早稲田ディフェンスをモールに引き寄せ,タイミングを狙い澄ますようにボールをモールから引き出して展開させ,フィニッシュへと持ち込む。あるいは,モールを徹底して動かし,グラウンディングを狙う。早稲田にとって,どのような攻撃を仕掛ければ彼らが嫌がるのか,そして自分たちらしいラグビーへと早稲田を引き込むにはどのように仕掛けていけばいいか,しっかりと理解しているような攻撃スタイルだったように感じます。


 ファイナル・スコアで見れば,接近戦と見えないこともありません。


 ではありますが,個人的には自分たちのラグビーで早稲田を抑え込み,自分たちのラグビーへと早稲田を引き込んだ帝京がゲームをコントロールし続けた,そんな試合に映りました。支配率,というスタッツがありますが,その支配率と印象がほぼシンクロするような試合に見えたわけです。連覇,と言うよりも,不本意な形で終わった対抗戦とは違うところを表現してみせる,という帝京の矜持を見たような,そんな感じもします。