対抗戦な決勝戦へ(第47回(10〜11)全国大学選手権・準決勝)。

やはり,接近戦状態なのだな,と。


 一時期は突き抜けた状態だったように感じられた早稲田に対して,帝京や慶應義塾が間合いを詰めてきたのか,それとも早稲田のペースが緩んだのか,は別としても,現状において「勝負権」を掌中にしているチームは複数ある,と。であればこそ,帝京は決勝への切符を奪取することに成功したのだろう,と思います。ただ,明治はもったいない,という言葉では足りないような印象です。


 さて。ラグビー大学選手権であります。箱根駅伝の往路優勝が決まろうか,というタイミングが第1試合の真っ最中だったわけでして,であれば相当な遅筆堂であります(申し訳ありません)。ですので,今回はごく大ざっぱなまとめ,という感じで書いてみよう,と思います。


 まず,東海大(関東リーグ戦1部首位)と帝京大(関東対抗戦A4位)とのゲームでありますが,結果的には対抗戦,その上位校のレベルの高さを印象付ける試合であったように感じます。
 先制トライ(コンバージョン)を奪取し,先手を取ったのは確かに東海大ではあるのですが,トライ奪取によって試合を自分たちで動かしていく,という形に持ち込みきれなかったような印象が残ります。帝京は先制トライを奪われてもチームが動揺しているような感じではなかったし,むしろ逆襲を仕掛けるタイミングを冷静に狙いながら試合を動かしているように感じられました。そんな帝京のプランに,東海大は結果として乗ってしまっているように見えたわけです。実際,30分には試合を振り出しに戻すトライ(コンバージョン)を奪われると,前半終了間際の時間帯には逆転を許してしまう。流れで見れば,帝京に流れが傾いた状態でハーフタイム,という印象でありました。
 後半,PGによって反発力を東海が見せると,直後の時間帯には帝京がトライを奪い,と立ち上がりの時間帯はどちらが後半の流れを明確に掌握するか,という動き方をしていたように思いますが,この試合の鍵となったのは10〜14分の流れを断ち切ることに成功した,帝京の攻撃ということになろうか,と思います。東海に再び試合をひっくり返されたあとの時間帯,であります。この時間帯,東海大から見れば押し切りたかったところでしょうし,帝京大としては踏みとどまらないといけない。のみならず,決勝への切符を奪うためには再び得点を奪取する必要もある。そんなクリティカルな時間帯に,得点を積み重ねていけたのは帝京大にとって大きかったように思います。


 続いて,大学選手権でも早明戦な,早稲田(対抗戦A1位)と明治(対抗戦A3位)の試合であります。


 結果として相当な大差となってしまった試合ですが,個人的にはそれほどの大差が付く試合ではなかったように思います。ちょっとだけ明治サイドに立って考えるならば,「縦」のタイミングがつかみきれなかったことで結果として攻撃リズムを自分たちから寸断,結果として試合全体のリズムを崩してしまった,いわば自壊してしまったゲームという側面もあるか,と思うのです。
 たとえば,22mライン〜10mライン付近までは自分たちのリズムで攻撃を組み立てていくことはできていたわけです。ビルドアップのリズムがどこかおかしい,というわけではなかった。むしろ,立ち上がりは明治のリズムだったように思いますし,トライ奪取という結果を引き出せれば,結果がこれほどのものになったか,という思いを持っています。ただ,ボールを縦に運んでいくタイミングがつかめない。仕掛けられないわけです。早稲田ディフェンスが縦に対してしっかりとした守備応対を繰り返している,という側面も当然に作用していますが,反面でボールを縦に動かす「アイディア」が明治からは感じられる局面が少なかった。これはかなり致命的な要素だったように思うのです。
 対して早稲田は,「縦」への意識をしっかりと持ち合わせていました。縦に明治ディフェンスを断ち割るためのアイディアが,しっかりとフィールドに表現されていた。また,自分たちが主導権をしっかりと掌握している,という余裕があってのことだと思いますが,トリッキーなパス・ワークを繰り出してもいた。SOである山中選手のトリッキーなパス・ワーク,パス・レシーバを実際に視界に収めることなく,シングルハンドでパスを繰り出していくスタイルはどこか,岩渕健輔(セブンスのコーチをされていますね。)の視界,と言うかラグビー・スタイルを彷彿させるものがあって,ラグビー・フリークとしてはひさびさに魅了された局面でありました。


 さてさて。タイトルにも書きましたが。


 この2試合の結果により,国立霞ヶ丘への切符を奪取したのはともに,対抗戦Aを主戦場とするチームとなりました。対抗戦ではリズムをつかみきれなかったものの,ディフェンディング・チャンプとして連覇への権利を得たチームと,対抗戦覇者としてのプライドを決勝戦へとぶつけようとするチームと。
 ラグビー日本選手権,という視点で見れば,準決勝終了時点で出場枠は確定しているわけですが,どちらが大学覇者として選手権に臨むか,というのは大きな意味を持つものと感じます。帝京,早稲田のプライドがフィールドでぶつかり合う,好試合を期待したいと思います。