楽しみなトミーカイラ。

個人的には,理想的なライトウェイトでした。


 トミーカイラが開発した,“ZZ”であります。


 フロントから見ると,ちょっとポルシェ的でもあり,でもUKなスポーツの雰囲気も漂っている。リアエンド方向から眺めてみると,かつてのグループ5なレーシング・マシンのようでもあり,となるとポルシェ917的な,あるいは936的な香りもどこかにある。オープンが基本だと思うのですが,ルーフをかけたときのデザインもなかなかスッとまとまっている。さすがは,「違いの分かる男」のデザインだな,と思った記憶があります。
 走ってナンボ,のためにすべてを最適化するという基本設計だったので,走ってナンボに関係が薄い要素は徹底的に削ぎ落とされていました。レーシング・マシン(構造を考えると,フォーミュラと言うよりはスポーツ・プロトタイプでしょうね。)に最低限の保安装備を装着して,公道での使用に耐えられるようにした。そんな考え方もできるクルマだったのですが,残念ながら衝突安全基準を充足することができない,という理由(だったと思うのですが)で,かなり早い段階でディスコンとなったのでした。


 そんなクルマ,EVとして復活だとか。


 今回はフットボールを完全に離れまして,webCGさんのニュース記事をもとに書いていこう,と思います。


 このZZをEVとして復活させたのは,グリーンロードモータースさんであります。
 それにしても,トミーカイラとは鋭いところに目を付けたな,と思いますし,テスラを考えるならば,すこぶる論理的な結論だな,と思います。テスラがベースとして考えた車両はロータスエリーゼ。ボディ・デザインにはテスラの個性も反映されていますが,基本的なシャシー・エンジニアリングを考えると,ロータスが開発したシャシーをそのまま生かしていると考えてよさそうです(当然,モータやバッテリを搭載するためのモディファイが施されているとは思いますが)。思うに,グリーンロードモータースもテスラをどこかで意識していたはずですし,テスラがベースとして選んだロータス,そのロータスと基本的な構成が類似しているトミーカイラはある意味,理想的なベース車両だったのではないかな,と思います。


 グリーンロードモータースさんのリリース,そして,青木さんがまとめた記事を読むと,ZZの後継車種として開発されていた(残念ながら,実際にはリリースされなかったのですが)ZZIIについてもEV化の計画が進んでいて,計画に参画している会社を眺めてみると,制御技術などではオムロン,モータについては日本電産などがリスティングされていて,なかなか本格的な体制が整っているようであります。


 さてさて。推察しますに,それほど生産ロットは大きくないはずです。受注生産に近い形,でありましょう。ならば,生産規模から逆算するような価格設定は不可能ですし,それだけに価格は高くなるわけですが,そのお値段はある意味,テスラよりもお買い得な感じがします。単純比較すれば,テスラの方が高性能ですが,車体重量で考えるとZZはかなり軽量に仕上がっていますし,加速の鋭さなどは結構期待できるかな,と感じます。


 いずれにしても。EVの実用性がどうだとか,自動車評論家なひとは喧しいことを言っておりますが,端的に,「面白い」と思います。面白いからと言って,右から左に動かせるおカネではないけれど,でも夢があって面白い。EVというのは,思うよりも大きな可能性がある。実用性に不安が,なんて,そんなことまでを評論家さんに講釈されても,と思うのですね。ずいぶん前の“Tipo”でも,スーパー7をEV化する企画があったし,EVを面白いと「知っているひと」は着実に増えている。メーカ,ではなくても,個人レベルでEVを仕立てて普段使いしているひとだっている。そういう地盤がすでにあることを,ちょっとは理解したらどうなのだろう,と思いますね。
 それはともかく(話が飛びました)。EVは面白いよ,可能性があるよ,と。そんな証明をしようとしているだけでも,グリーンロードモータースさんにはかなりの存在価値があると,ワタシは思います。