遅れてきたFJクルーザー。

言われてみれば(トヨタ・オフィシャル),結構な時間が経過しています。


 コンセプト・モデルから考えると7シーズン,北米に投入された時期から考えれば4シーズンが経過しているわけですから,純然たる新規車種とは言えません。石橋を叩き続けて,それでも納得しなくて,なんて揶揄されがちなメーカでありますし,この意思決定の遅さは何とかならないものか,と思いつつ,それでも国内専用モデルを用意してくれたことには感謝かな,と思います。



 今回はフットボールを離れまして,webCGさんのニュース記事をもとに,FJクルーザーの話を書いていこう,と思います。


 さて。今回はメカニカルな話を中心にしますと。


 やはり,オフにはリジッドだな,と感じます。舗装路での接地性,路面追従性を考えるとバタつくであるとか,ネガティブな評価が先行しがちですが,オフとなると評価は見事なまでに逆転します。
 このオフィシャル・フォトを通じて説明すると,右後輪はかなり伸びきっているように見えますが,その反面でしっかりと地面に接地しています。では反対側はどうなっているか,と見ると,フル・ボトムに近いような形で沈んでいます。このような形でも駆動を掛けられる,というのがリジッドの持つメリットなのです。
 なかなかこのような路面状態には出会うことがないし,林道ツーリング,などと言っても環境面への配慮であったりで大型なクロカン4駆が乗り入れられない林道なども多くなっています。それだけに,悪路走破性を最大限に引き出す状況は少ないかも知れません。知れませんが,「道具」としてクロカン4駆と付き合う,そのときに懐の深さとして感じられる要素となるかな,と思うのです。
 また,インテリア・トリムを見ても「道具」としての設計が徹底されているな,と感じます。たとえば,エアコンのコントロール・ダイヤルやシフトノブ,ステアリングなどのインターフェイスはグローブ着用時の操作性を意識して大型化されていますし,シートに採用されるファブリックも撥水性,防水性を持ったものとされています。


 ランクル,という名前はいつの間にか,リアル・クロカンな代名詞からレンジローバーのような高級SUVという意味合いを持ったものへと変化していったように思います。ボディ・サイズも大きく,単純にスクエアなものではなくて高級感を持った面構成を採用,インテリア・トリムも60/40クロスのアウトドア・ジャケットを羽織ってドライブする,というよりはオシャレな仕立てのテーラード・ジャケットで,という雰囲気へと大きく変わってきています。オフな性能が忘れられているわけではないのだけれど,妙にモダンな雰囲気をまとおうとしている,と言いますか。
 でも,ランクルの原点は,と考えると「道具」としての色彩が強いもの,と感じるのです。トヨタが考えたように,FJ40型は「道具」感が強かった。機能的なアウトドア・ジャケットのような感じです。そんな道具,現代にあっても決して軽視されるものではないだろうと思いますし,現代的な要素を落とし込むことで,新たな魅力を放つかも知れない。単純な復刻版,ではなくて,しっかりと現代的なディテール,たとえば止水ジッパーなどのディテールを落とし込んだアウトドア・ジャケット,のようなものでしょうか。ひさびさに,道具であることを強く感じさせるトヨタです。


 個人的には,それほど強い思い入れを持つメーカではありませんが,このクルマはいささか気になります。