対京都戦(10−30)。

不安定さを引きずっているのは確かだけれど。


 悪循環を断ち切ることが重要であって,「勝ち点3」を奪取することが重要である,と。そして,悪循環に嵌り込んでいた時期,何が不足していたのか,クロージングを意識するべき時間帯に投入されたフットボーラーが端的に示してくれたように思うのです。


 まいどでありますが,の京都戦であります。


 さて。「勝ち点3」を奪取し,3連敗という悪循環を断ち切ることができた,という意味では確かにポジティブに捉えるべきゲームですが,内容面での課題も多く残った試合ではなかったか,と感じます。


 まず,大きな枠組みで考えると,まだ悪い意味で“イーブン・ペース”な時間帯が多過ぎる,と感じます。好意的に解釈するならば,「縦」への意識付けが徹底されている,となるのかも知れませんが,「縦」に鋭く,というタイミングを焦ってしまっているように受け取れるのです。「緩急」という言葉がありますが,この緩急の落差がいささか小さい。緩に傾いた状態で落差が小さい(急が機能しない)のも当然に問題ですが,「勝ち点」を奪えない,勝ち点を奪えたとしてもゲームの動かし方に不安定性を見せるときの浦和は,急に傾いた状態で落差が小さい(緩への意識が抜け落ちてしまう)ように感じられるのです。


 ここでは結構書き続けていること,なのですが。


 ボール・ポゼッションと,試合のリズムを積極的に操ることとがつながっていない,というのがもったいない,と思うのです。
 相手守備ブロックがバランスを崩しているタイミングならば,縦に鋭く,素早くカウンター・アタックを仕掛けていく,という判断も重要です。ポゼッションか,カウンターかなどという択一ではなくて,ポゼッションもカウンターも,同じように重要な要素であるはずです。であれば,カウンターを仕掛けるためのポジショニングも求められるし,シンプルにボールを動かす,という判断も求められる。当然,ゴーリーからシンプルにトップへとフィードを仕掛ける,という形もあり得るし,最終ラインや低めに構えたセントラルからロングレンジ・パスを,という必要性もある。けれど,「縦」への意識だけが強くなり過ぎて,相手守備ブロックを揺さぶる,引き出す(=当然,相手守備ブロックを揺さぶるためにフリーランを仕掛ける,ということも意味します。)という過程がスキップされた状態で攻撃を仕掛けてしまう。たとえば,ゴーリーから最終ラインへとボールを預け,ポゼッションを維持しながら相手守備ブロックに隙が生じる,焦れてくるタイミングを待つ,という判断もあっていい。攻撃ユニットを,窮屈な状態に持ち込まないためにも,自分たちから焦れない必要があるはずです。フィニッシュから逆算するならば,必ずどこかの段階で「縦」にチャレンジする必要性があるのだけれど,そのときにリズムの落差があっていい。「緩」をしっかりと使いこなすことで動き出しを待ち,相手守備ブロックを揺さぶる,クラックを作り出す準備を整え,「急」へのギアチェンジで相手守備ブロックを断ち割りにかかる,というアプローチが抜け落ち気味になる,というのが最も大きな課題かな,と思うのです。


 もうひとつ,枠組みに関わる部分で書けば。


 「緩」から「急」へスイッチを切り替えるフットボーラーが,あまりに限られてしまっている。今節のスターター段階ではセントラル・ミッドフィールドだけがリズムチェンジにかかるスイッチを持っている,意識してスイッチを使おうとしているように受け取れる。端的に書いてしまえば,柏木選手だけがリズムをコントロールする意識を持っているように受け取れてしまうのです。厳しい言い方をしてしまえば,浦和が表現するべき戦術をしっかりと理解し,その戦術にアクセントを付けるにはどうすべきか,意識してピッチに立ち,実際に表現しようとしているのが柏木選手だけ,であるかのように受け取れてしまうわけです。使い使われる,の関係性で見れば,柏木選手が「使う」側に位置し,アタッキング・ミッドフィールドに入っている峻希選手や原口選手,ヴィリー選手は「使われる」側に位置することにはなるか,と思うのですが,「使われる」側もただ使われるのではなく,「さらに使う」ことを意識してほしい。そのときに,リズムを動かす意識をもっと前面に出していい。ポジションをスムーズに循環させるためには,「使い使われる」が循環していく必要があるはずですし,その中で小さくリズムを動かしていく,という形があっていいと思うのですが,リズムを動かす,という側面から見てもやはり,単調さを感じるところです。
 この部分で,クロージングを意識するべき時間帯からピッチに立ったフットボーラーは,スイッチを明確に意識しているように感じられますし,使い使われる,という動的なバランスを皮膚感覚で理解しているな,と感じます。加えて,ボブ・ペイズリーの言葉を借りるならば「ボールをゴールに置いてくる」ためのスキル,冷静さを持ち合わせてもいる。鋭いボール奪取をきっかけに,右サイドを積極的に駆け上がり,シュートを放った峻希選手も試合後のコメントでこの決定力に触れていたけれど,いまのチームはまだまだ,このフットボーラーから吸収すべき,継承すべき要素を多く残している,ということだろうと思います。


 今節のスターター,もうちょっと広く考えるならば悪循環に嵌り込んでいた時期のチームに,残念ながら欠けている,あるいは不足してしまっている要素を埋める重要なピースがロブソン・ポンテというフットボーラーなのだ,と改めて強く意識させられる,そんな時間帯だったように思うのです。
 少なくとも,いまの浦和に「足らざるもの」,「不足しているもの」を持っているフットボーラーが多くはないこと,その多くはないフットボーラーのひとりであることは,82分からの時間帯が物語っていることだと,個人的に思うところです。