2011MY的ZX−10R。

個性的なフロント・フェイスであります。


 ありますが。「個性的」,という意味では継続性を確かに感じるのですけど,デザイン要素を冷静に眺めてみると,かなりモデルごとの独自性が際立ちます。局面,あるいは曲線を多用するモデルをリリースすると,逆に直線的,鋭角的なデザイン要素を落とし込んだモデルをリリースしてくる。ライト・ハウジングの切り方にしても,エア・インテークの切り方にしても「らしさ」は確かに共通するのかな,と思うけれど,やはりディテールはかなり違った印象を持つわけです。


 個人的には,2006モデルあたりの柔らかな印象も好意的に見ていたのですが,2008モデル以降の「ハード」な仕立て方はやはり,「カワサキ」というイメージにより近付いた,と言うべきかも知れません(ただ,オープンロードで相当神経を使うことになる,そんなライド感だとは思いますけど。)。


 さて。フットボールを離れまして,カワサキのZX−10R(カワサキUKオフィシャル・英語)についてちょっと書いていこうかな,と思います。



 では,いつものようにデザイン面から書きはじめていきますに。
 ごく大ざっぱな表現をすれば,直線と鋭角を基本線として,曲面を組み込んだデザイン,ということになりましょうか。ライト・ハウジングやエア・インテーク,そしてLEDウィンカーを組み込んだリアビュー・ミラーなど,ひとつひとつのディテールを見ていくと,明確にエッジの効いたデザインを持ち込んでいます。最も大きな面積を占めるカウリングにしても,エッジをアクセントとして落とし込んでいます。ただ,直線的なデザインで貫かれているか,となると実際にはそうでもなくて,タンク形状を冷静に見てみると,実際にマシンを操るライダーに対して優しい,曲線基調なデザインを採用しています。そんなタンクが全体のデザインから浮き上がっているようには見えないわけですから,フロント・セクションにしてもシート・カウルにしてもしっかりと面構成は意識しながら,同時に「エッジ」を効かせたデザインにまとめ上げる,と。ライバル・メーカとは明確に違うデザイン・テイストを表現しているな,と感じるところです。


 と,個性的なカワサキ,をデザインからして表現しているわけですけども。


 ライディング・フィールも個性的なのかな,というのが興味であります。「手強い」という評価があった2008モデルと比較して,「乗りやすさ」方向へとマシンを振ってきているのか,それともカワサキらしく,本来のパフォーマンスを存分に味わうためにはオープンロードではなくてレース・トラックへ,と割り切ったセッティングを施してくるのか,と。


 考えてみれば,1000ccクラスはエキスパートのためのバイク,と言い換えてもいいはずで,であるならば公道でのフレンドリーさ,だけではなくて,レース・トラックでスポーツ・ライディングを存分に楽しむためのセッティングが施されているマシン,というのも不思議はないな,と思うのです。個人的には,みんなが同じ方向を向いてマシン開発を,と言うよりは,カワサキのように違った方向性からマシン開発を,というのも悪くないな,と思うのです。