対広島戦(10−29A)。

「勝負弱い」と言ってしまえば,確かにその通りだけれど。


 その勝負弱さが何から導かれるものなのか,が最も重要な要素かな,と思います。いつも通りに,の広島戦でありますが,今回は短めに。


 浦和なフットボールを,表現できていない,というわけではありません。


 ただ,安定して表現できる時間帯が長くはなくて,リズムを相手に持って行かれるとなかなか戻しきれないな,と感じるわけです。それだけに,「誰がスターターであろうと,浦和のフットボール」とは,まだ言えない。
 たとえば,高い位置からのプレッシングが一時期描けていた姿から外れている。高い位置,アタッキング・ミッドフィールドがカバーするエリアでのボール奪取が,描けていたイメージから微妙に外れた形になる。「個」に過度に依存せず,組織的なフットボールを構築する,というコンセプトはあるとしても,実際には「個」が戦列から外れてしまうと微妙に描くべき姿に違いを生じる。僅差,と言うべきものだとは思うけれど,確実に蓄積してしまう僅差でもある。その僅差が,セントラル・ミッドフィールドに影響を与える。ある部分での僅差が,さらにほかの部分へと影響を与える。ボール奪取が,表現できていた戦術イメージから外れてしまえば,最終ラインも積極的なライン・コントロールを仕掛けるのが難しくなる。局面で見れば僅差でしかないけれど,蓄積してしまえばチーム・バランスを崩すには十分な僅差となってしまう。ちょっとした皺が,チーム全体に広がっていってしまっているように感じるのです。
 同時に,今節の印象としてはアウトサイドを相手に的確に突かれてしまった,と感じています。プレッシングがイメージから微妙にずれている,ということと当然に関連することですが,サイドからのビルドアップに対して有効なプレッシャーが掛からず,アタッキング・サードの深いエリアにまでの侵入を許す。相手ボール・ホルダーにアプローチに行くべきか,それともアウトサイドに連動してセンターへと飛び込んでくる相手に対してマークに付くか。その判断を中途半端な形にしてしまっていたように感じられますし,そのために守備ラインが相手の攻撃に合わせるように下がってしまい,ライン・コントロールが抜け落ちた状態に嵌り込んでいたように感じます。


 ちょっと,屋号な表現をしてみると。


 浦和として,どのようなセッティングを理想として位置付けるか,は具体的にイメージできてきている,と。
 ただ,条件が整わずにスイートスポットから微妙に外れたセッティングしか出せないこともある。そのときに,ライディング・リズムが必要以上に変化してしまう,というような感じではないかな,と思うのです。修正舵を当てるなど,積極的なコントロールが必要なのは言うまでもないけれど,積極的なコントロールを「意識し過ぎて」,本来必要とされるコントロールまでを乱してしまっているのではないかな,と。


 どの程度の修正舵を当てれば,セッティングをカバーできるのか。感覚的に理解,自然に表現するにはまだ,チームとして「若さ(未成熟な要素)」がある,と言うべきかも知れません。攻撃面においても,「縦」が重要な要素であることは間違いない。けれど,縦にボールを繰り出すタイミングが,チームとして最適なのか。厳しいタイミングでボールを縦に,という局面を感じるし,ギアをスムーズに切り替える,という意味でやはり,戦列を外れてしまっている「個」を意識する。スイッチを意識するのは必要不可欠な要素だけれど,そのスイッチをいつ押すのか,も同時に重要な要素であるはず。その感覚が,チームとして共有されているとは言い難い。
 「勝ち点3」を積み上げることで,リーグ戦でのACL出場権を奪取するという目標をクリアするためには,ある程度結果から逆算したアプローチを,と思わないでもないのですが,中途半端にゲーム・コントロールだけを意識した戦い方を落とし込むのではなくて,浦和として狙うフットボールを押し切りながら,同時にゲームを主導的に動かせるようにする。スイッチを誰かが持っている,のではなく,誰もがスイッチを持ち,誰もがスイッチを押せるようにする。そういう狙いがあるのだとすれば,どうしても通らなければならない「踊り場」として考えるべきかも知れないし,ここで痺れを切らすかどうか,というのが重要な分岐点になるのかも知れない,と思ったりするのです。