第90回(2010)高校ラグビー・埼玉県予選(準決勝まで)。

思うに,90回記念大会だから,でありましょうが。


 今季は出場枠が1から2へと広がっています。例年ならば準々決勝の壁で跳ね返されていた有力校も,決勝へと勝ち上がっていくチャンスがある,そんなシーズンであります。ということで,今回はフットボールでも楕円球なフットボールを,高体連ラグビー専門部の県予選ページをもとに,埼玉県予選な話を書いていこう,と思います。


 残念ながら,熊谷に足を運ぶことができていませんので,ちょっとトーナメントを俯瞰してみます。


 相変わらず,勝負権を持ったチームは県北部に集中している,という印象は強いですね。


 いわゆるAシード校で考えると第1地区では正智深谷に進修館,第2地区では深谷がクレジットされます。そんなAシードに割って入り,強豪校としての位置を確保しているのが同じく第2地区のAシード,浦和であります。
 ラグビーフットボールフットボールと比較して,実力差が比較的ファイナル・スコアへと反映される可能性が高い競技だな,と感じるところがあります。それだけに,Aシードの位置をここ数季しっかりと確保し続けている浦和は,積み重ねてきた蓄積が的確に新たなチームへと受け継がれていく,という「強豪校」が持っている循環が機能しているな,と感じるところです。とは言いながら,浦和のSFは相当に厳しかったようです。残念ながら実際にチェックできなかったのですが,慶應志木とのゲームはファイナル・スコアを見る限り,かなり抑え込まれた状態で決勝への切符を奪った,と言えそうです。昨季の戦いぶりを見ていても,守備面での安定性は高いものがあるな,と思いますが,攻撃面では「もっとできる」のではないかな,と思わせるところがありましたから,この厳しいSFをきっかけに,チームがワンステップ上がってくれると,反対側から決勝の切符を奪った深谷とのゲーム,つまりは代表権を争ってきたライバルとのゲームがさらに面白いものになるのではないか,と思ったりします。


 しかしながら,AシードとBシードとの距離は思うほどには遠くない,ということを第1地区のBシード校である,熊谷工が示しているように感じます。浦和にその立場を奪われた形にはなりますが,かつてはAシードにクレジットされていた強豪校であり,持っている蓄積は決して小さくないチームだと感じます。そんな熊谷工は第1地区で正智深谷との決勝戦へと駒を進めてきています。なかなかに厳しい相手との決勝戦でありますが,熊谷工は強かにワンチャンスを狙い,そのワンチャンスでゲームを引き寄せる,という印象を持ってもいます。


 なかなか,県北部の牙城は簡単には崩れない。


 かも知れませんが,少なくともラグビーフットボールの有力校,と呼ぶべき存在が県南部や県西部にも見えてきているし,その傾向は変わっていません。昨季,QF段階でその姿を熊谷のB,あるいはCグラウンドで見ているチームがBシードを確保している,というケースもある。
 浦和を県北部の壁を打ち破る最右翼,と位置付けるならば,彼らに続く,そして彼らを脅かすような存在感を示すチームが出てきてほしい。ロースコア・ゲームへと引き込んだ慶應志木は当然,Aシードを狙ってほしいチームですし,深谷に跳ね返された伊奈学園も,楽しみなチームです。さらには,川口や春日部,といったチームにも有力校としての存在感を継続して示してきてほしい,と思っています。


 結果としては,Aシードがシードとしての存在感,意味をしっかりと表現する形のトーナメントになっていますが,埼玉県代表が本戦で2回戦の壁を破るには,もっと熾烈なトーナメントになってほしい,切磋琢磨してほしい,と思いますし,そのためにもBシードや今季実力を見せてきたノンシードには,来季も同じく高いパフォーマンスを表現してほしい,と思っています。