対韓国戦(IFM)。

フレンドリーな雰囲気がまったくない,フレンドリーでありますが。


 見方を変えれば,チーム・ビルディング初期段階に願ってもないような実戦負荷を掛けられる環境でもあるわけです。ワールドカップ直前のフレンドリーを考えるならば,ゲーム・コントロールをかけるどころか,相手のゲーム・プランに対して明確な後手を踏んだ相手でもあります。そんな相手に対して,どのような戦い方をできるか,と。


 大ざっぱに言えば,悪くないゲームでした。相手のプランに引きずられるでもなく,相手が引き寄せようとする流れを巧みに自分たちへと引き寄せようとする。ゲームの動かし方からしても,チーム・ビルディングに小さくない足掛かりを与えるようなものだったように感じます。
 ということで,ちょっと短めにアウェイな韓国戦であります。


 立ち上がりからリズムを掌握しようと,積極的なプレッシングをミッドフィールドで仕掛けてくる。相手が狙うゲームの動かし方に対して,アンコントロールな状態に陥ることなく,ポジショニング・バランスを強く意識しながら守備的な安定性を保持しようとする。このゲームでの,ひとつの鍵は立ち上がりの15分,だったように思うのです(この15分が経過するまでに,駒野選手が負傷,離脱を余儀なくされるというのは大きな誤算でしたが)。
 相手の攻撃を考えれば,“エース”が欠けている,というデメリットを感じさせるところは確かにありました。ボール奪取からビルドアップの初期段階,という部分ではそれほどの変化を感じさせはしないものの,ビルドアップからフィニッシュへ,という流れにアクセント,あるいは変化を感じる要素は少なく,比較的イーブンなリズムでフィニッシュへ,という形になっていたように感じます。
 加えて,このゲームでは守備バランスが崩れる時間帯を少なく抑え込むことができていた。
 ポジショニング・バランスが潰される方向性に傾いたままになるでもなく,逆に引き延ばされる方向性に振れてしまうわけでもなく。ひとりひとりのフットボーラーがしっかりとした距離感を維持できる時間帯が,このゲームではしっかりと確保できていた,という印象です。


 さて,攻撃面は,と見ると。


 シンプルな連携から相手守備ブロックを揺さぶる,という局面も確かに見ることができましたが,ボールを収め,さらにパスを繰り出す,という形を多く作れた,というよりは,「個」のパフォーマンスを背景に,相手守備ブロックを引っ張りながら突破を仕掛け,その突破によって生まれる相手守備ブロックの隙を突かせる,あるいは突破からフィニッシュへと持ち込んでしまう,という形が相対的に多かったな,と感じるところです。組織で相手を崩していく,その初手を相手に抑えられている時間帯が多かった,とも言えましょうが,相手のフィジカルな部分で後手を踏まずに勝負を挑めている,とも見ることができるか,と感じます。


 結果は,スコアレス・ドローに終わったけれど。


 チーム・ビルディングが,ワールドカップまでのチームという基盤を生かしながら,そして得られた足掛かりを生かしながら着実に進んでいく可能性は相当に高い,という感触を持たせるに充分なゲームだったように思いますし,新たなチーム・ビルディング,その初期段階で「バリバリのアウェイ」,なかなか望んでも得られない負荷を掛けて実戦を経験できたことは,アジアカップに向けて意味を持ってくれるのではないか(と言いますか,持ってもらわないと困りますけど。),と感じます。