対大宮戦(10−25A)。

ボールの動かし方が,変わってしまった。


 大まかに言うならば,前半と後半で変わった,と思いますが,実際にはどのようにハーフタイムを迎えようか,と意識する時間帯から微妙にネガティブに変わってきてしまっていたように思います。この変わってしまったボールの動かし方が,後半に引き継がれてしまった,という印象を受けるわけです。


 いつものように1日遅れ,でありますが,アウェイ・マッチな大宮戦であります。


 この試合,ボールの動かし方という部分で収穫と,課題の両面を見せていたように思います。そこで今回は,ボールの動かし方を軸に書いてみよう,と思っています。


 まずは,ゲーム立ち上がりの時間帯でありますが。緩やかにボールを動かすタイミングと,縦にチャレンジしていくタイミングとが,しっかりとかみ合っていた,という印象を持っています。
 相手は,トップの位置からプレッシャーを掛けていく,という意識を持ってゲームに入ってきていた,と感じます。比較的高い位置でボールを奪取,シンプルにボールを動かしながらフィニッシュへと持ち込む。かつて,4−4ブロックを意識させる戦い方をしてきたチームですが,そのブロックを意識させながら,ハーフコート・カウンターをも狙うフットボールを狙ってきたように受け取っています。そのプレッシャーを回避しながら,相手守備ブロックをどのようにして揺さぶるか,見出した隙をどのようにして突くか。焦らずに見極めるようなビルドアップを繰り返していたな,と感じます。今節にあっては実質的な2トップとして運用できる攻撃ユニットとセントラルが,どのように相手守備ブロックに対してチャレンジしていくか,オフ・ザ・ボールでの動きを促すような形で最終ラインとゴーリーがボールを動かしていく。2トップとして動かせるユニットを今節は組んでいましたから,ミドルレンジやロングレンジでのパスを収めるステーションを複数つくることができる。また,ステーションとの距離感を縮めることもできる。ステーションにボールを繰り出してからのリズムをつくりやすかった,という部分も作用していると思いますが,緩やかなリズムから縦のチャレンジへ,というギアチェンジが機能していたように思うのです。


 先制点から追加点を奪取する。この時間帯は確かに,理想的な展開でありましょう。ただ,この時間帯が,いささか短かったようにも感じるのです。


 ボールの動かし方で,緩から急へのアクセントが機能していたのが,ネガティブな意味でのイーブン・ペースに近付いていってしまった,と思うわけです。最終ラインで緩やかにボールを動かす,局面によっては下がってきているセントラルやゴーリーを含めてボールを回していく,という形が少なくなり,ボールを早いタイミングで縦方向に,という形に傾いてきた。早いタイミングでボールを縦に動かしてしまうことで,結果として相手が狙うフットボールを表現させるような形に嵌り込んでいくことになるし,前半終了を意識すべき時間帯での失点は,守備応対面の問題と言うよりもむしろ,チームとして相手のフットボールを「受ける」ような形,なかば自分たちから隙を生むような形で導かれてしまったもの,という印象であります。


 リードを奪ってハーフタイムを迎えたのは確かですが,決して望ましい形で試合を折り返せたわけではない。この流れを,後半にあっても引き戻しきれなかった,と感じます。


 決して,真正面から「受けている」とは感じられなかったのですが,ボール奪取位置が微妙にずれていたり,ビルドアップで収まる,あるいは収めてほしいボールが収まらないことで,結果として相手のリズムでゲームを動かされる時間帯が増えてきている,というような印象を受けるわけです。
 後半を大ざっぱに見れば,ボールを落ち着かせてから縦に,ではなくて,かなり早い段階でボールが縦に動く局面が多くなってきた。ゲームを落ち着かせる時間帯がかなり少なくなってしまった,と感じるわけです。確かに,カウンター・アタックを仕掛けやすい状態になってきていた,とは言えるように思うのですが,浦和にとってはチームの距離感をコンパクトに,適切に維持できている,というよりは微妙にその距離感が変わってしまっている,ということも意味するように思えるのです。


 「勝ち点3」,という物理的な手掛かりを確保したこと。


 当然ながらに,大きな収穫であります。スタンディング上位との差を詰めていくためには,ひとつひとつのゲームで「勝ち点3」を着実に積み上げていく必要性があるのは言うまでもなく,今節は求められているタスクをクリアした,ということになります。加えて,“Derby Match”という,スタンディングとは関係なく結果が求められるゲームにおいて,結果を引き出した,という意味においてもタスクはクリアできている,と。
 ではありますが,リズムをコントロールする,という部分では大きな課題をもらった,とも考えておくべきでしょう。ただ,リーグ戦終盤に差し掛かり,ひとつひとつの試合での「結果」が重要性を増してくる時期であれば,「結果」を引き出したゲームで課題が見えてきた,というのは悪いことではない,と思うところです。