90分ハーフの前半戦。

ホーム・アンド・アウェイであること。


 加えて,「アウェイ・ゴール」という要素が絡んでいること。


 ホームで第1戦を戦えるという部分が,必ずしもアドバンテージに直結するとは言い切れないところがあります。攻撃的に,という意識を相手に利用される可能性も出てきますし,最悪のケースであれば先手を取られることになる。もちろん,得点を奪わないことには,相手に対する直接的なプレッシャーとはならないのですが,守備面でのバランスをしっかりと意識しておかないと,得点で得られたアドバンテージが,相当程度に割り引かれてしまう,そんな可能性を持ったりもします。


 ちょっと横目に,なナビスコカップ(準決勝第1戦)であります。


 さて。アウェイ・ゴールという部分から準決勝第1戦を眺めてみると,2試合ともにアウェイ・ゴールを奪われる形になっています。許したアウェイ・ゴールは同じく1。ではありますが,第2戦に向けてのフリーハンドをどの程度確保したか,と見れば,最も戦い方の幅を持っているのは磐田を相手に第1戦を戦った川崎,ではないかな,と思います。
 磐田は,川崎の奪ったアウェイ・ゴールを無効化するべく,どうしても等々力で得点を奪いたい,と考えてくるはずです。攻守バランスを攻に傾けない限りは,「先」が見えてこないわけですから。その意識を利用しながらゲームを進める,という方法論も持てるわけですし,当然,彼らの武器である攻撃力で磐田を抑え込む,という方向性もあり得る話でしょう。少なくとも,心理的な優位性をもって,90分ハーフの前半戦を折り返したな,と感じるところです。


 もうひとつの第1戦は,と見るに。


 第2戦に向けてのハンドリングが難しいスコア,という印象でしょうか。広島としても,76分に許したアウェイ・ゴールが影を落とすところがありましょう。清水としても,アウェイ・ゴールを奪取したのは確かですが,広島に対するプレッシャーを直接的なものとするためには,第2戦で(可能ならば早い時間帯で,となりましょうが)先手を打ちたいところでしょう。その意識を,広島に利用される可能性もあり得るわけです。清水が積極的に仕掛けてくる,そのタイミングを狙って逆襲を仕掛ける,と。第2戦は,立ち上がりから鍔迫り合いのような時間帯が続いていくのかな,と個人的には見ています。


 とは見てきましたが。


 正直なところを言えば,浦和ならばどうだろう,とやはり見てしまいます。ちょっと折り畳みますと。


 カップ戦では,「先制点」の重要性がより強まる,と感じます。リーグ戦よりも,「負けたくない」という意識が強くなるからか,先制点を奪うまでの時間帯が長くなりがちでもある。このような状態に,09シーズン以降の浦和の戦い方をあてはめてみると,自分たちから焦れてしまうケースが多かったかも,と感じるところがあります。ポゼッションで相手を崩しに行く,という枠組みはもちろん大事だけれど,その枠組みにこだわりすぎて,縦という武器を意識できなかったり,無理にビートを強めるような,リスクを背負ってしまったり。


 ただ,ここ数節で戦術的な枠が広がってきているかな,と見ていますし,前節は感触が「勝ち点」という手掛かりになってきたな,と感じます。


 前半は,決してハイ・ビートな攻撃を続けていた,という印象はありません。むしろ,スローにボールを動かしながら,相手守備ブロックを崩す,そのきっかけを狙うようなビルドアップを仕掛けていました。スローな流れがあれば,当然にミドルレンジやロングレンジなパスが意味を持ってきます。攻撃ユニットがボールを呼び込む,スペースを狙いに行くための動きをつくる,そのための時間をスローなビルドアップでつくれるようになるわけです。


 時間を使わずにスペースを奪う,のではなくて,むしろ時間を使う,主導権を握って時間を支配することでスペースを奪いに行く,というようなイメージでありましょうか。ここでは,チェルシーフットボール・スタイルから,浦和が意識すべきは緩急(リズム・コントロール)では,と書いたことがありますが,ちょっとずつリズムをコントロールするフットボールになってきているな,と感じます。


 もともと浦和が持っている「縦」への意識を,ポゼッションとどのようにして織り合わせていくのか,ということが求められ続けているのかな,と思いますし,その意味で前節の戦い方はひとつの解かな,と見ています。先制点を奪取する,というハードルを越えると,戦い方には幅が見えてくる。であればこそ,先制点を奪うまでの時間帯,そこでの戦い方が重要でしょう。相手によって積極的に仕掛ける立ち上がりを見せるのか,それとも隙を作り出すためにスローな立ち上がりで入るのか。リズムによって,戦術的な幅を広げていく必要があるはずです。
 リーグ戦にあっても当然必要となるアイディアですが,結果が求められるカップ戦では,もっとハッキリと必要性が見えてくる,と思うのです。それだけに,ナビスコの敗退はもったいないし,天皇杯は是が非でも,と感じるところです。