対新潟戦(10−24)。

リーグ戦は,ファースト・チームの「総合力」を問う。


 であるとして,では浦和の総合力は,と考えてみると,ベースが強くなりつつあるか,と感じます。ケガによって離脱を余儀なくされている選手も多く,必ずしもベストの状態でリーグ戦を戦っているとは言えません。言えないけれど,チームとして表現しようとするフットボールには大きな変化が出ていないし,「勝ち点3」という結果を奪取することにも成功しています。


 誰がスターターとしてクレジットされようと,浦和が狙うフットボールを表現できる。組織だけでなく個,という重要なアクセントを期待できる状態に持ち込める段階に差し掛かってきた。ちょっと好意的かも知れませんが,そんな感触を「勝ち点3」という手掛かり,足掛かりをもって感じ取ることのできたゲームではなかったかな,と思います。


 いつもよりもさらに1日遅れて,の新潟戦であります。


 さて。前半は主導権を引き寄せきれない,もうちょっとニュートラルな表現を使うならば,主導権が揺れ動く時間帯が長かった,という印象です。もちろん,ごく立ち上がりの段階で主導権を引き寄せられた,という側面はありますが,レフェリングの話は置くとして。
 相手が積極的にボール奪取を仕掛けてきた,という要素が大きく作用している,と思いますが,ボールを落ち着かせてビルドアップ,という形になかなか持ち込めず,失ったボール・コントロールを取り戻すために再びボール奪取を仕掛けていく,というように,中盤でのトランジション勝負,という側面があったかな,と感じます。攻撃リズムを強めるために加速をかける,のではなく,加速をかけようにも攻撃リズムの初期段階でリズムを寸断される時間帯が多かった,という印象です。
 また,15分という早い段階で負傷交代を余儀なくされる,というのも守備応対面に影響を与えていたな,と感じるところです。当然,しっかりとした準備ができるタイミングではありませんから,試合へとスムーズに入っていくのはなかなかに難しいはずです。加えて,相手はボール奪取から単純に縦に仕掛けるのではなく,同じ縦でも右サイドのスペース(浦和から見るならば,左サイド)を意識的に狙ってきていた。この左での守備応対がなかなか厳しかった,というのが印象として残っています。


 対して,攻撃面から見てみますと。


 縦に仕掛けていく意識が,ボール奪取勝負によっても抑え込まれなかったこと,機動性とバランスしはじめたことはポジティブな要素だと感じます。確かに,前半の不安定な時間帯ではミス,という形にはなっているけれど,少なくとも消極的な形でミスを誘発する,という形に陥ってはいなかった。
 ボール・ポゼッションという側面だけが突出してしまっていた時期は,攻撃リズムがネガティブな意味でイーブン・ペースなままで,縦にチャレンジする,その選択肢があまりに狭かったように映ります。縦方向の機動性が抜け落ちてしまうから,攻撃を強める,ということが攻撃に人数を掛ける,という方向性に傾きがちになる。結果として,リスキーな攻撃を仕掛けることになってしまっていたように見えるのです。攻撃で必要以上のリスク・テイクをしているということは当然,守備応対面,特にカウンター・アタックへの応対面で脆さを抱え込むことになっていました。
 対して,今節を含めたここ数節は,ポゼッションだけではなくて,新たなパス・コースやスペースを作るためのフリー・ラン,シュート・コースを切り開くための機動性を活かせるようになっている。
 この機動性,鍵を握っているのは新たなセントラル・ミッドフィールドのコンビネーションであろう,と感じます。彼らの持っている高い機動性,縦にチャレンジしていく姿勢が,チームとしての機動性,その重要な基盤になってくれている。シーズン終盤にかけて,10スペックなチームが新たなフェーズに入っている,と表現できるかも知れません。縦へのチャレンジが機能しはじめているから,ポゼッションが意味を持つようになっている。


 加えて言えば。「ユニット」としてゴールを陥れるという意識が浸透してきている,ということを,ハーフタイムを視界に収めようかという時間帯での先制点奪取で実感できたように思います。


 トップとアタッキング・ミッドフィールドとのパス交換によって,相手守備ブロックにギャップを作りだし,シュート・コースを切り開く。そのシュート・コースをセントラル・ミッドフィールドが冷静に狙う。攻撃面での起点であり,同時に守備応対面で重要な役割を今節も担っていたセントラルですが,特に攻撃面,最終的な部分にいい形で関与できてきています。この先制点奪取の局面は,ユニットとして相手を揺さぶる,得点を奪取するという方向性が具体的な形になった,と感じるわけです。


 先制点,という先手を取って,後半へと入っていくわけですが,今節における鍵は選手交代,交代に伴うパッケージ変更にもあったな,と感じます。


 相手は左サイド,SB背後のスペースを明確に狙ってきていました。積極的な攻撃参加,というストロング・ポイントがある反面で,ボール・コントロールを失う,あるいは攻撃が寸断されたあとの対応でルーズな部分がある(高い位置にまで攻め上がっているためではありますが),というネガティブが確かにあります。そのネガティブを攻略目標として,相手は狙ってきた。このポイントを潰し,守備的なバランスを整える,というメッセージをピッチに伝える方向で戦術交代を仕掛けていきます。
 先制点奪取によって,戦い方に幅を持たせることが可能になったことに加えて,戦術交代によって相手のプランを抑え込むことも可能になった。自分たちからリスクを冒して,という戦い方ではなく,相手が出て来ざるを得ない状況へと追い込むことで,カウンターを仕掛けやすくなった,とも言えるでしょうか。となれば,あとは引き寄せた主導権を手放さないための追加点奪取が求められるわけですが,今節はこの課題もクリアすることができた。かなり角度的に厳しい,深いエリアからのシュートであるようにも感じましたが,シュートに持ち込むという意識が追加点につながってくれた,という印象を持っています。


 さてさて。指揮官もコメントしているように,ステップ・バイ・ステップで熟成が進んでいるな,と感じるところですが。


 そのステップ,1段の高さが増してきているかも,と感じるところです。いままでの浦和を思うと,「個」への依存度がいささか高過ぎたように感じます。チームの構成が変わってしまうと,チームが表現すべきフットボールが変化してしまうし,パフォーマンスの絶対値が上下動してしまう,というように。
 対して,現段階の浦和を考えると,フットボール・スタイルがそれほど大きく「個」に依存することがなくなってきている,と感じます。もちろん,局面打開などにあっては「個」が大きな意味を持ちますし,個を過小評価するべきではありません。その意味で,「個」を持っているフットボーラーが欠けている現状は残念でもあります。ありますが,個に多くを依存したフットボールでは,安定したパフォーマンスを表現し続けることが難しいのも確かです。戦術的な約束事,という基盤をどれだけ多くのフットボーラーが共有しているか。ここ数節の戦い方を見ると,浦和としてどのように戦うか,というイメージを共有している基盤は,しっかりと大きくなりつつあるな,と感じますし,今節は「勝ち点3」という裏付けを伴うことができています。戦力的な環境がなかなか安定しない,という厳しさは確かにありますが,裏返しとしてチームが安定してパフォーマンスを表現していく,重要な前提条件が整いつつある,という感触もあるように思うわけです。


 ひさびさに本拠・中野田で奪取した「「勝ち点3」は,シーズン終盤を戦っていくにあたって,ちょっとだけ大きな手掛かり,足掛かりになってくれるのではないか,と感じます。