The Hunt and the Hunted(パシフィック最終盤)。

追うものと,追われるものと。


 これほどまでに,明確なコントラストを描くのか,と感じますし,シーズン最終盤は心理面がチーム・コンディションに大きな影響を与えるのだな,という印象を受けます。


 ひさびさに,ちょっとだけ野球な話をしてみよう,と思います。


 まずは,追われる側であったライオンズから見ていくと。


 やはり,「心理的な重圧」が支配していた,という印象です。当然,チームは「普段通りに」と思っていただろうとは思うのだけれど,その「普段通りに」とことさらに意識しなければいけない,というのがすでに,普段通りの試合への準備,普段通りの試合への入り方や戦い方から離れかけている,ということを意味してもいるのだろう,と。実際,5連敗を喫しているライオンズの戦い方を見ると,どうもギクシャクしているというか,硬さが取れないと言いますか。射程に収めている,という意識がネガティブに作用してしまっているように映りました。
 もちろん,現行のルールにおいては日本シリーズへの出場権が,パシフィックの優勝とイコールでは必ずしもないので,必要以上にマジックを消滅させたことを重く感じることはない,と(理の部分では)思うところもあります。ただ同時に,ポスト・シーズンはさらにチームにさまざまな負荷が掛かりますし,短期決戦を心理的な不安を抱えた状態で駆け抜けられるか,という部分が出てもくるように思います。この最終盤の急減速。いつかもたどった道ではあるのですが,その経験が生かし切れていなかったな,と思うところです。


 対して,ホークスであります。


 「追うもの」の優位性を,存分に生かしたな,という印象が当然にあります。ただ,彼らにとっては優勝を積極的に獲りに行くべき「実質的な」理由があるな,とも感じます。先ほども触れた,ポスト・シーズンの存在です。
 ポスト・シーズンが本格的に導入された初年度と2年目,彼らは日本シリーズへの出場権を獲得,と言いますか,確保することができていません。レギュラー・シーズンで安定した成績を収め,優勝を勝ち取っているにもかかわらず,短期決戦でチームを再加速させることに失敗してしまっているわけです。
 レギュラー・シーズンを首位で通過できなかったシーズンを考えても,残念ながらホークスはポスト・シーズンを巧く戦えていない,という印象が残っています。それだけに,ホークスとしてはより大きなアドバンテージを手にすることのできる,上位でのレギュラー・シーズン終了を意識しているかな,と思うのです。追うものとしての心理的な優位性,加えてポスト・シーズンをより有利な状態で戦いたい,という意識。ホークスにマジックが移った,という背景にはそんな要素が絡んでいるかな,と思うのです。


 野球であろうと,フットボールであろうと。


 「心理」がチーム・コンディションであったりパフォーマンスに大きな影響を与える。ポジティブにも,そして当然にネガティブにも。「負けられない」という意識は大事だけれど,その意識が強くなり過ぎれば自分たちの動きを縛り付けることにもなるし,逆に「何があっても追い付き,追い越す」という意思を持ち続けることができれば,相手に点灯していたマジックを消滅させ,自分たちの側に表示させることもできる。
 ごく当然のことを再確認させてくれる,パシフィックの熾烈な最終盤だな,と思うのです。