対清水戦(10−23)。

手掛かりが得られていない試合だとは,まったく思っていません。


 スタッツの前段階,と言うべきか,そんな手掛かりが比較的見えた試合,と評価すべきか,と思っています。でありますが,手掛かりを「勝ち点」という要素にしっかりと結び付けるには,今節の収穫面と同時に,あえて課題だと感じられる部分に意識を振り向けておくべきかな,と感じます。


 09シーズンからのフットボールは,どうしても「ミス」とお付き合いしなければいけないフットボールである,と言えるでしょうか。ポゼッションを基盤とするだけに,そのポゼッションに不安定性を見せてしまえば,相手に付け入る隙を与えることになります。その隙を,自分たちでつくってしまうのか,それとも相手につくられるのか,というのは,同じ「隙」であっても,大きく意味合いが違っていくように思うのです。


 ということで,いつも通り1日遅れで清水戦であります。


 では,テニス用語を借りて,今節の課題面だと感じる部分から書きはじめれば。


 “Unforced Error”(自分たちで避けることのできる,いわゆる凡ミス)から“Forced Error”(避けきれない,やむを得ないミス)に結び付きかねない形が,少なくなってはいるとは思うけれど,まだしっかりと残ってしまっているな,と感じます。
 局面ベースで見れば,ごく細かい部分でのミス,にはなるのだけれど,積極的に相手守備ブロックに対してチャレンジしていくタイミングでミスを誘発してしまう,という形ではありません。むしろ,この段階でのミスはもっと出すべきだろう,と思っています。相手守備ブロックへのチャレンジを避けて通って,その結果としてのノーミスならば,フットボールを戦っていることにはならないでしょう。
 そうではなくて,ミドル・サード,あるいはもっと自陣深い位置でビルドアップをしていこう,というタイミングで小さな,でも自分たちで避けることができるミスを犯してしまっているように感じるのです。パスを繰り出す側であれば,ちょっとだけパスが弱い,あるいはパスの角度が違ってしまう。パスを呼び込む側からすれば,パスを受けるための動き出しがちょっとだけディレイしてしまっている,あるいは足許にパスが収まると意識してか,ポジションを微調整していない。そんな意識が重なり合うような形で,ボール・コントロールを失う局面が,ゲームのリズムが上がりはじめた時間帯で見えるようになってきた。
 相手が,そんな小さなミスをトランジションのきっかけとして狙っていたのも,また確かだと受け取れます。ウィンガー,と表現すべきか,少なくともアタッキング・ミッドフィールドとは表現できるポジションに入っている複数選手は,ミスを誘うような守備応対を仕掛けていたし,パスを繰り出す側のズレを「読んで」もいた。今節は精度を欠いているような印象もありましたが,高い位置でのボール奪取からシンプルに縦を狙い,ボール・ホルダーからのリターンを引き出す動きからフィニッシュを狙う。どちらかと言えば,相手はハーフコートに近いカウンターを意識して戦術的な約束事を束ねていたように感じられます。


 フットボールはどうしても,ミスとお付き合いしなければならない競技です。


 加えて言えば,浦和が狙うポゼッションを基盤とするフットボールはミスを誘発しやすい,という部分があればこそ,丁寧なビルドアップが求められるな,と思うのです。その意味で,以前から書いているようにスローに回してもいいし,スローに回すために,もうちょっとパスを呼び込む側がパスを繰り出す側に対して,視界に入ってあげる,という丁寧さが求められるところがあるな,と思うわけです。
 自陣に近い位置で,ボール・コントロールを失ってしまえば,守備応対で使える物理的なエリアが狭いものとなってしまいます。ボール・ホルダーに対するアプローチが遅れる,あるいはアプローチが仕掛けられず,ブロックを崩して対応を,という形になれば,さらに守備応対が厳しくなる。攻撃の初期段階でのミス,自分たちが誘発してしまったミスが,結果として守備応対面での致命的なミスに行き着きかねないフットボールへと移行しているわけですから,どれだけ避けられるミスを丁寧に潰していけるか,がシーズン終盤にかけての課題かな,と感じるところです。


 当然,収穫面もありまして。今節は,縦に仕掛けていくパス,そのパスに反応していく形が見られています。


 タイミングとしてはオフサイドのジャッジを受けている(飛び出しとパスを繰り出すタイミングが,まだ微妙にズレている)わけですが,好意的に解釈すれば,相手守備ブロックに対して裏のスペースへと抜けていく,という意識がチームとして浸透してきている,縦に狙うパスを繰り出せるようになっている,となりましょう。
 今節は明確にカウンター・アタックを仕掛ける形が表現できていましたし,カウンター・アタックから先制点を奪取できている。09シーズン以降のフットボールでは,なかなか相手が仕掛けてきた裏を突く,カウンターが掛からない,というネガティブがありましたが,そんなネガティブを払拭する形で先制点を奪取できた,というのは今節における大きな収穫,そのひとつでしょう。また,今節にあってはポゼッションを基盤として,という形だけではなくて,シンプルな仕掛けからフィニッシュを狙うであったり,相手守備ブロックの裏を狙うフリーラン,スペースでボールを受ける,という形が見えてきている。アウトサイドが直線的に相手陣内深くまで入り込んでしまって,逆に窮屈さをつくる,という形ではなくて,中央へと絞り込むように入っていくことで相手守備ブロックのバランスを崩しに行く,という形を表現できてもいる。このときに,SBとアタッキング・ミッドフィールド(と言うか,ウィンガーというか)のコンビネーションが,ギリギリのタイミングでのコンビネーションではなくて,(ある程度の)時間的な余裕を持ったコンビネーションで動ける時間帯が増えてきている。


 物理的な数字,という部分では収穫は「1」にとどまっている。確かにその通りです。


 でありますが,ポゼッションを基盤とするフットボール,という「戻るべき場所」を揺るがすことなく,チームとしての戦い方に表現の幅が見えてきていること,戦力的な要素でチームとしてのパフォーマンスが大きく影響されるのではなくて,チームとしての戦い方,という原則を揺らすことなく新たな戦力を活かせるようになりつつある,ということなどは,数字には反映されない収穫であろう,と感じます。


 スタンディング上位をうかがうタイミングは1節遅れた,とは言えるかも知れません。けれども,上を狙うための重要なピースはそろってきている。そんな印象も持った試合でありました。