実戦投入されない発展型S102。

形となっても,実戦には持ち込まれない。


 どうしても,もったいないと思ってしまいます。


 今回はフットボールを離れまして,オートスポーツさんのニュース記事と,鈴木さんのコラム(童夢オフィシャル)をもとに,幻となってしまう公算が高い発展型S102のことを書いていこう,と思います。


 童夢さんが発展型S102開発にあたって読み込んでいたのは,2011年ルールであります。アストン・マーティンが自社開発のLMPマシンを仕立てるにあたって(2011年のル・マンを狙っているのだとか),読み込んでいた技術規則と同じはずです。となると,かなり楽観的な想像になってしまいますが,ともすれば「勝負権」を手にすることができたかも,と思ってしまいます。
 ここまでの技術規則は,レーシング・ディーゼルなLMP1に優位性を持たせるものでした。いささか乱暴な言い方をすれば,レースをする前段階で勝負権を持っているレース屋が絞り込めるようなものだったわけです。つまり,アウディプジョーのマッチ・レースだったわけですね。ガソリン・エンジンのLMP1を持ち込むレース屋さんにしてみれば,ディーゼル勢が全滅でもしてくれなければ,勝負権を手にすることができない,と。
 そんな技術規則が書き換えられているわけですから,童夢さんにしても発展型S102をル・マンに,という思いは強かったはずで,鈴木さんのコラムにも新たな技術規則に対応しながら戦闘力を,という方向での開発過程が書かれていました。リア・ウィングが小型化することに伴う,リア・ウィング支持方法の変更(当然,空力的な配慮を意識した形状変更でありますな。)や,新たな技術規則に対応するリア・セクションのデザイン変更(マシン後方のスリットについてのデザイン,タイア・ハウス上部への開口処理など),さらには垂直尾翼のセットなど,S102に加えられた技術的な変更,空力的なモディファイを確認すべく,風洞実験を終了したのだとか。


 このコラムに記載されている日付を見ると,9月15日となっています。


 鈴木さんは,「2週間後」に風洞実験と同じボディを組み合わせたマシンが完成する,と書かれていますから,9月下旬から10月初頭には,2011年の技術規則に対応したスポーツ・プロトタイプが形となるわけです。少なくとも,技術規則によって勝負権を奪われていた今までとは違って,ガソリン・エンジンにも勝負権がある競争環境に持ち込めるレーシング・マシンが。
 それだけに,「契約関係」という部分で不必要な労力を割かれ,最終的にはル・マンへ挑戦する,という情熱までもが奪われていってしまった,ということが残念ですし,ワークス参戦でなければル・マンに注目もしない,むしろ,プライベティアがどういう形であるにせよ,参戦し続けている,という部分に価値を見出すことのできなかったメディアなども,このル・マン挑戦を終了させる大きな要因だった。もったいない限りだな,と思います。


 できることならば,レーシング・フィールドでどれほどの能力を持っているのか,見てみたいものです。