阿部選手、さっそく実戦。

指揮官が阿部選手を,どのように見ているか。


 どこか,指揮官の期待が透けて見えるような初戦であるように思います。


 今回は,こちらのニュース記事をもとに,阿部選手の初戦,本拠地でのカーディフ・シティ戦のことを書いてみよう,と思います。


 ビジターであるカーディフは,試合消化数が1試合少ないものの,無敗でウォーカー・スタジアムへと乗り込んできていました。逆にレスターはリーグ戦立ち上がり,決して望ましいスタートを切ったわけではない。早い段階で態勢を立て直すためにも,上位に位置するチームから「勝ち点3」を奪っておきたいゲームだったか,と思います。


 阿部選手が戦術交代によってピッチに入ったのは,82分であります。この試合を決定付けた,と言うべきアンディ・キングに代えて,ピッチに投入されたわけです。スコアはこの時点で2−1とリードを奪っていますから,ある意味では(野球的な表現を引っ張ってくると)クローザーのような形も期待されたか,と感じます。ではあるのですが,入ったポジションは4−2−3−1のトップ下とのことです。阿部選手に合わせてチームのセットを変えて,ではなくて,そのままキングのポジション,恐らく,アタッキング・ミッドフィールド、という表現を使った方がより気分,でありましょうが,そのポジションに入った,と。記事の表現ですと,かなり攻撃,守備両面でしっかりとした存在感だったようであります。


 さて。入団会見に先駆けて,リザーブとしてダッグアウトに置く。チームとしての約束事,戦術的な約束事についての深い理解,と言うに十分な時間とは言えないにしても,パウロ・ソウザ監督はそんな決断をしてきているわけです。しかも,短時間とは言いながら実戦投入もしています。


 思うに,戦術的な理解度という部分での阿部選手への期待,なのだな,と感じます。ブリーフィングやトレーニングも大事だけれど,実際にピッチレベルでチームを観察させれば,どのような形でチームが動いているか,阿部選手ならばある程度の理解はできるだろう,と。その期待に応えた,という見方もできるかな,と思います。


 もうひとつ。セントラル・ミッドフィールドではなくて,もう1段高いアタッキングの位置で使ってきている。守備面での計算はすでに成り立っていて(ワールドカップ本戦での動きを見て,「できる」と踏んでいるかな,と),むしろ攻撃面でどれだけチームを動かせるのか,局面を打開しに行けるのか,という部分を含めてちょっと見てみよう,という意図も感じますし,当然高い位置から守備を,という意図もあるだろう,と。


 と書いてきて,思わずひとりのフットボーラーを思い浮かべてしまいました。


 コンディションに生じる波を最低限に抑え込むことができるならば,ポテンシャルを安定して実際のパフォーマンスへと変換させられるならば,などの留保文言が付けられがちだけれど,持てる能力の高さ(シレッと放つミドルレンジからのシュートなんて,最たる例ですな。),戦術理解度の高さやフィジカル・ストレングスを,多様なポジションで表現し続けているフットボーラーを。誰あろう,暢久選手であります。


 そう言えば,ジェフ時代に阿部選手が背負っていたナンバーは,いまの暢久選手と同じく“6”。やはり,どこかに共通する要素がある,ということでしょうか。