ジェラール・ウリエ、再びプレミアへ。

確かに,守備的な要素が強い指揮官かな,とは思います。


 リーグ戦を制覇するにあたって,「何か」が欠けていた,というのは確かでありましょう。2位,というポジションにまでチームを引き上げはするけれど,あと一歩が足りなかったわけですから。けれど,リーグ戦ではなくて,カップ戦へと視点を変えれば,守備的なフットボールが大きな意味を持ったかな,と思えてきます。
 加えて書けば,継続的なチーム・ビルディングこそに,最も大きな意味があったのではないか,と思っています。


 今回は,ひさびさに欧州な話を日刊スポーツさんの記事をもとにしつつ書いていこう,と思っています。


 かつて,アンフィールドを仕事場としていたジェラール・ウリエさんが,アストン・ヴィラと契約,ということであります。ヴィラ・パークを本拠地とする,長き歴史を誇るクラブ(フットボールリーグにおけるオリジナル12,そのひとつ),であります。ありますが,プレミアシップでの戦績を冷静に眺めてみれば,残念ながらチャンピオンシップを争う勝負権を持っているとは言いがたい,強豪,という形容詞よりも,「古豪」とでも表現すべきクラブ,となりましょう。


 となると,ジェラールさんに何を求めているのか,何となく見えてくるような感じです。


 ちょっと,リヴァプール時代を思い出してみるに。ジェラールさんが就任するまでのリヴァプールは,「強豪」という形容が相応しかった時代から,「古豪」という言葉が似合うようなクラブになりつつあった,と感じています。“ブーツルーム”という慣習を堅持していたクラブが,勝負権を取り戻すためのチーム・ビルディングを進めていく,というメッセージが,ジェラールさんを指揮官として招聘する,という部分に表れていたかな,と思うのです。
 であれば,守備的な要素からチーム・ビルディングをやり直す,というのは決して間違ったアプローチだったとは思っていないわけです。確かに,かつての戦績を思えば,ジェラールさん時代の戦績は決して目立つものだとは思わないけれど,カップ戦,と言いますかトーナメントを駆け抜けられるだけのチカラを蓄えてきていたのも確かなことでしょう。安定して,チームのチカラを溜めていく,そんなやり方をしていたな,と。


 アストン・ヴィラの基本的な発想は,恐らくは「古豪」という言葉を返上することが出発点にあるか,と思います。


 ここ数季の戦績を見れば,強豪,という領域に踏み込みつつある,とは感じます。感じますが,ここからのジャンプアップを間違えてしまうと,最悪では降格,ということをも考えなければならない。バランスを大きく崩すことなく,冷静にジャンプするタイミングを狙う。当然,獲れるタイトルは獲りに行く。チーム・ビルディングの安定性,加速力を問われるトーナメントでの強さ,そしてオリンピック・リヨンでの仕事を総合して,ジェラールさんを指名したのだろう,と。


 リヴァプールでは届かなかった,プレミアシップヴィランズにもたらすことができるか。最終的には,この目標を狙うことになるのでしょうが,まずは,1995〜96シーズン以来遠ざかっているタイトルを,ひとつ奪取すること。そのために,どんなアプローチをジェラールがしてくるか,ちょっと見てみようと思っております。