対鹿島戦(10−21)。

「勝ち点2」が滑り落ちていったような印象を持ちはするけれど。


 実際に今節獲得した「勝ち点1」だけではなく,目に見えない収穫があったゲームではないか,と感じていますし,今節が転換点になってくれるのではないか,という印象を持っています。


 どこか,戦術的な表現度に意識が強く傾いてしまっていて,フットボールの持つ「勝負」という側面で淡泊さ,ときに脆さを感じさせていた戦い方に,少なからぬ変化をもたらすきっかけになってくれるような,そんな印象を持っているわけです。ギドが中野田のダッグアウトにいた頃に強く感じることのできた「勝負への姿勢」,そんな要素を再びチームに取り戻すきっかけになってくれるゲームではないか,と。


 ということで,いつも通りに1日遅れ,の鹿島戦であります。


 ごく大ざっぱに試合を振り返ってみますに。


 前半は,ボールが攻撃ユニットで収まらなかったことが印象に残っています。
 相手は攻撃ユニットにボールを収めよう,というタイミングを的確に狙って守備応対を仕掛けてきていました。たとえば,トップをステーションにしてボールを引き出そうとするパスを繰り出すとしても,そのステーションへのマークがしっかりと付いているし,ステーションにボールが当たる瞬間を的確に狙うように守備応対に入られる。そのために,ステーションからボールを呼び込む動きが引き出せなくなる,という循環に陥ることになる。
 アタッキング・ミッドフィールドの主戦エリアにあっても,相手の鋭いプレッシングを仕掛けられるために,攻撃のビルドアップ段階,チームとして攻撃リズムを引き上げる前段階でボール・コントロールを失う局面が多く,自分たちのリズムで攻撃をビルドアップしていく,という時間帯を多くつくるという形には持ち込めなかった。
 相手は攻撃へと転じると,ピッチをワイドに使った攻撃を組み立ててきますが,守備バランスを大きく崩した形で相手への守備応対へ,という局面が少なかったために,守備応対面で決定的な破綻を招くような形は抑え込めていた。全体的には主導権を相手が掌握した状態でハーフタイムへ,という形ではなかったか,と思います。スコアレス,という前半ではあったわけですが,緊張感が強く漂うスコアレスであったように感じます。


 後半はやはり,PKストップが流れを引き寄せる,大きなきっかけになったと感じます。
 ミッドフィールドが相手ボール・ホルダーをうまくつかまえられない(相手を最終ラインに追い込んでいくようなチェイシングであったり,プレッシングがなかなか機能しない)状態に陥ってしまって,PKを与えることになってしまう。この厳しい局面を跳ねのけたことで,ゲームの空気が変わっていったように感じます。
 相手はハイペースなプレッシングを仕掛けていくことで,早い段階で先制点を奪取,ペースを自分たちのリズムでコントロールしようという意図を持っていたように映りますが,後半の段階にあっても均衡を打ち破ることができず,さらにはPKをストップされることで,プレッシングへの鋭さが強く感じられない形になってきた。リズム,という部分ではスローになってきているような印象を受けたわけです。


 このタイミングで,先制点を奪取することに成功する。


 ここであえて課題を指摘するならば,追加点を奪いに行ける時間帯で追加点を奪えなかった,という部分かな,と感じます。相手のリズムは確かにスローになっていました。ボール・ホルダーに対するプレッシングを鋭く仕掛け続けていた裏返し,だろうと思うけれど,守備応対が鋭さを持たなくなっていた。この時間帯を捉えて,カウンター・アタックを仕掛けていく,という形にまでは持ち込めた。ただ。フィニッシュという部分が欠けてしまった。この時間帯を生かし切れなかったことが,「勝ち点1」に減算することになってしまう,ひとつの伏線ではなかったかな,と思います。
 もうひとつの伏線は,失点を喫する局面,その前段階ではないかな,と思います。ゲーム・クロックが89:59(中野田での表示ですと,44:59)で消えて,フォースがLEDボードで示したアディショナル・タイムへと入っていったタイミングでありますが,相手の距離感でボールを動かされている時間帯が多くなってしまっていた。このタイミングで仕掛けを強めなければ,勝ち点を奪取することができない,という相手の意思が明確に見える。その意思を受け止めるような形になってしまったかも,と思うのです。そのために,相手の攻撃が循環をはじめてしまう。この循環を断ち切りきれなかった,という部分が作用しているかな,と感じるわけです。


 
 勝ちたかった,勝たせてやりたかった試合。その通りではありますが,「戦える」という感触を強く感じられる,ともすれば,物理的に獲得できた勝ち点1という手掛かり,足掛かりよりも大きな手掛かり,足掛かりを得た試合ではなかったか,とも思っています。試合終了後,競技場を包むような拍手,戦いを終えた選手たちを鼓舞するかのような拍手には,そんな感触が伴っていたように感じます。