対湘南戦(10−20A)。

壁を突き破る,そのきっかけ。


 志向するフットボール・スタイルと,物理的な条件を突き合わせていける,そのポイントを見出しつつある,という言い方でもいいでしょうけれど,そんな要素をつかんできているな,と感じます。あとは,そのきっかけを立ち上がりにより近い時間帯でつかめるかどうか。もっと突き詰めないといけない部分もあるのかも,ですが,差し引いてもいい要素を差し引いていく,というのも大事なのかな,と思ったりします。


 さて。ひさびさに遅筆堂の面目躍如,な湘南戦であります。でありますので,ちょっと短めで。


 まず,今回は相手がどう戦い方を組み立ててきたか,誤算はどこだったか,を見てみますに。
 端的に言ってしまえば,前半をスコアレスに持ち込むことができれば,浦和が機動性を落としてくる。その機動性が落ちたところで先制点を奪取,主導権を掌握したままタイムアップを狙う,と。前節までのスカウティングからすれば,セオリー通りとも言えるようなプランを組んでいたはずです。
 そのプランを崩したのは,後半での落ち込みの少なさ,ではなかったか,と思いますし,45:00から再び動きだしたゲーム・クロック,その立ち上がりの時間帯で浦和が先制点を奪えたこと,でありましょう。


 00:00からの立ち上がり,その段階で先制点を奪えれば,確かに理想的な展開ではあります。
 ありますが,スコアレスで前半を終わったとしても焦ることなく,ハーフタイムを跨ぐことができている。前半段階での手応え,というか感覚を落とすことなく,今節にあっては後半開始段階での戦術交代によって,チームとしての機動性は決して落とさない,という戦術的なメッセージが明確に示されたようにも感じます。主導権を奪う,そのきっかけとして大きく作用する先制点奪取。前節までは先制点を奪う,という部分でノッキングしていた(確信が揺らいでしまっていた,焦りがあったがゆえのノッキングかな,と思いますが)ように見えますが,今節にあっては,相手に先制点を奪われてからゴールへの意識が,という形に入り込むのではなくて,自分たちからリズムを引き寄せられた。45:00までの段階でどのように先制点を,という課題は確かに残っているものの,チーム・コンディションはステップ・バイ・ステップで戻りつつあるな,と感じますし,狙うフットボールと時期的な条件を折り合わせる,そのための手掛かりをつかみつつあるな,とも感じるところです。


 浦和に対する処方箋,部分的であるとしてもその処方箋を無効化した,という意味は大きい,と感じます。スコアレスで45:00を乗り切ったとしても,主導権を握れるとは限らない,と。この部分だけを考えるならば,かなり今節で得られた手掛かり,というか,足掛かりは大きいものがある,と感じます。「勝ち点3」奪取,という側面だけでなく,チームが心理的に落ち込むことが少なくなってきた,ということでもありましょうし,機動性がある程度維持できるようになりつつある,と。
 それだけに,45:00までの対応が今度は課題だろう,と思うのです。


 45:00までの時間帯で,相手を崩すスタイルを構築できるかどうか。スペースが潰されているケースが多いかとは思うのですが,その狭いスペースでどれだけチームを加速させる小さなフリーランを仕掛け,そのフリーランを連鎖させられるか。そんな形が見えてくると,スタンディング上位との距離感を縮め,射程に収めていくこともできてくるかも,などと思うのです。