対大宮戦(10−16)。

リズムの話から,フットボールな話ができるようにはなった。


 なった,とは思うけれども。


 リズムとは違った側面で,意識面の問題があるな,と。この意識の問題をクリアしていかないと,戦い方が明確になった相手守備ブロックを揺さぶりに行くのは難しいかな,と感じます。いままで浦和が表現してきたフットボールからすれば,要求レベルは高い。高いけれど,超えない限りブレイクスルーはない,と。


 1日遅れ,でありまして大宮戦であります。


 さて。


 攻撃を組み立てていく,その初期段階のパス・ワークには安定感が出てきているな,と思います。最終ラインでボールを動かすときも,相手守備ブロックのどの位置に隙が見えてきているか,あるいはボールを収めようとする動きがあるかどうか,を見ながらパスを繰り出すことができている。この基盤は大事にしてほしいな,と思います。


 問題は,ここからのステップにあるな,と感じます。ごく大ざっぱな言い方をしてしまえば,「使い使われる(オレが生きるために,オマエを使う)」が同期していく時間帯が,あまりに少ない。


 たとえば,ボールを預けて,縦にフリーランを仕掛けていく,という形があったとしても,リターンがパスを繰り出した選手へと戻っていくことがなかなかない。


 預けた選手が,仕掛けのリズムに乗っていく,というよりも,リズムを1回断ち切るような形で攻撃を再構築しているような局面が残念ながら多い。そのために,ボールを預けた選手は止まってしまうし,さらには連動した動きがなかなか機能しないから,相手守備ブロックにしてみれば,細かく動いている相手を抑え込むような守備応対ではなくて,止まっている状態に近い相手を抑えるような守備応対で済むことになる。ユニットとしての加速が安定していない,と言うか,不用意にギアを違ったギアに入れているようでもあり,クラッチを切ってしまってはいけないタイミングでクラッチを蹴飛ばしてしまっているようにも感じるのです。
 加えて言えば,ボールを受ける側が,スペースに動きだしながらボールをほしい,という形ではなくて,すでに相手マーカーを背負っている形でボールを受けようとしている。マーカーのブラインドに抜けようという意識が,ボールを受けるタイミングでなかなか出てこない。そのために,ビルドアップ初期段階から中期段階では,攻撃のバリエーションがそろってきた,という印象を与えながら,仕掛けていく,という意識をパスに,という形がなかなか表現できず,ブロックを崩さないで守備応対を,という相手に対して,縦に抜けていくようなコンビネーションが成立しない。


 もちろん,使われるかどうか,は流れの問題なのですが,少なくとも再び使われるための準備をしていなければならないのも,確かでしょう。


 今節で言うならば,16〜18分前後の時間帯の流れは「使い使われる」がリズミカルに積み上がっていった,恐らくは浦和が狙っていくべきフットボールを表現できた流れだろう,と見ています。ただ,ビハインドを背負ってからの時間帯では,相手の狭いスペースを断ち割るための細かい連携がなかなか機能していない。小さなフリーランで局面を崩しに,というのではなくて,物理的に人数を掛けて,という方向性に傾いてしまうために,崩しに直接関与していない選手が出てくるような形に陥ってもいた。むしろ,自分たちでスペースを狭くしているようにも感じました。


 誰かに,スイッチを入れてもらうような攻撃では,ブレイクスルーは難しいでしょう。


 誰もが,スイッチに手を掛けているし,チームとしての加速を途切れさせない,という責任を負っている,と感じてほしいな,と。そして恐らく,そのスイッチは,フリーランでしょう。長距離ではなくて,短距離の。
 心理的に厳しい局面でらしさが出てこない,ということは,まだ誰もがスイッチを持っている,という意識が浸透しきっているとは言えないでしょう。相手のブロックを崩せなかったのはなぜなのか,というレッスンは,「勝ち点0」という結果以上に重いものだと思いますし,ブレイクスルーを果たすための重要な鍵でもあるように思っています。