ひさびさの王座奪還。

言われてみれば,であります。


 2002,2006ともにランナーアップでありました。トロフィーを掲げたのはいつか,と振り返ってみれば,1998にさかのぼることになるわけです。オフ・ザ・ピッチ,と言いますか,ピッチサイドでの存在感はかなり大きいのですが,オン・ザ・ピッチでの存在感として考えるならば,あと一歩が続いた,とも言えるでしょう。


 キット・サプライヤーという側面からワールドカップを眺めれば,こんな表現を使うこともできるわけです。今回は,読売新聞さんの記事をもとにしながら,サプライヤーという視点でワールドカップを振り返ってみよう,と。


 マクラの文章は主語を敢えて隠したわけですが,ご想像の通りアディダスであります。


 欧州,南米のフットボール・ネイションをさっと思い浮かべてみると,ナイキの存在感が強まってきているのは確かだろう,と感じます。たとえばブラジルですと,個人的にはアンブロのイメージも結構強いものがあるのですが,キット・サプライヤーがナイキへと変更になってから結構な時間が経過していますし,もはやカナリア・カラーのユニフォームにはスウッシュ・マーク,というのが固定化されてきているかな,と。
 同じことは,オランダ代表にも言えることで,かつてはトレフォイルが胸にあったような記憶があるのだけれど,同じくスウッシュに変更となってから相当な時間が経過しています。


 とは言え,2010ではアディダスの存在感がひさびさに戻ってきた,という感じでしょうか。セカンド・ラウンドへと駒を進めてきたチームで,ナイキとの契約関係にあるのが5チームに対して,アディダスとの契約を締結しているのは7チーム。契約関係にあるチームがトロフィーを掲げられた,ということも当然に大きな要素でありましょうが,セカンド・ラウンドでの存在感を強めることができた,というのもアディダス的には結構大きいのだろう,と感じるところです。


 で,面白いと思うのはここからでして。


 アディダス,ナイキともに,なかなかに面白い展開をしていること,です。


 まずはアディダスでありますが,正確には契約関係にはないはずのチームにかかわる商品を展開しています。パフォーマンス・ラインと呼ばれるレンジではなくて,アディダス・オリジナルズと呼ばれる商品レンジで,ブラジルやオランダのレトロな感じの商品を展開していたのです。いわゆるレプリカ・ユニフォームではなくて,かつてブラジル代表やオランダ代表が使っていたユニフォーム,を思い起こさせるようなデザインでTシャツやトラックトップなどをリリースしている,というわけです。
 対してナイキは,エキップメント契約を締結しているフットボーラーに注目する,という手法を採用しています。これならば,チームとの契約関係とは別ですので,マーケティングを展開するとしても大きな問題にはならない。ワールドカップ,という言葉を持ち出すわけでもないし,あくまでもフィーチャーしているのはひとりのフットボーラーである,と。とは言いながら,ナイキとの契約関係にあるフットボーラー,彼の彫像(コンピュータ制御で削り出していたような。)が原宿のストアにあった,というのは,ユニフォーム展開とのミスマッチ感が何とも,でありました。


 最後に,この記事でも指摘されている,ブーツ(スパイク)な話を。


 注目度が低いトーナメントであったり,あるいはたとえばトレーニング時には違ったサプライヤーのブーツが,などというケースもあり得る話,かも知れません。ちょっとオールド・ファッションではありますが,黒いブーツであれば,メーカの特徴を示す部分をブラックアウトしてしまえば,必ずしも遠目にはどこのスパイクか,見分けが難しいとも言えるわけです。フィッティングを突き詰めると,実際には契約関係にないメーカのブーツが,などというケースも,ないとは言えない。
 けれど,ワールドカップのように世界的な注目度の高いトーナメントでもあれば,エキップメントを提供しているメーカとしても,できるだけ足許に注目してほしい,などの思いはありましょう。特徴的なカラーリングが施された新型が各メーカから用意されていましたが,ひとつには契約関係にあるフットボーラーが,ホントに使ってくれるかどうか,をチェックしやすいという側面もありそうだな,と思ったりもします。
 それだけに,むしろ競争が熾烈なのはブーツの世界,かも知れません。