Germany v. Spain (Semi-Final).

ちょっと早過ぎたピークだったのか。


 それとも,意識が守備的な方向性へと傾きすぎたか。どこか,ここまでの「らしさ」を失ったような印象です。
 対して,「らしくない」勝ち上がり方をしながら,ちょっとずつ「らしさ」を取り戻してきた。反対側から決勝へと駒を進めてきたオランダと,どこか共通項を感じさせるトーナメントの進み方かな,などと思います。


 ちょっと軽めに,もうひとつの準決勝であります。


 まずは,ドイツでありますが。


 攻撃的であることによって試合の流れをつかんでいこう,という新たな「らしさ」を表現してきたのが,いままでの戦いだったかな,と思います。しかしながら,この試合では相手に試合の流れ,という部分で先手を取られたかな,という印象を持ちます。積極的に攻撃を仕掛けていくことで,結果として相手の攻撃を受けることを避けようとしたのか,それともいままでのセオリーに戻ることで決勝への切符をつかもうとしたのか,いずれにしても,ここまでの「らしさ」はそれほど強く表現されていなかった。


 対して,スペインは準決勝の段階で「らしさ」と勝ち上がりのバランスが取れてきたような印象です。ドイツ,という対戦相手が化学反応を起こすきっかけとなったのかも知れませんが,やっと「いつも通り」という方向性に軸足を置きながら戦うことができた,というのが大きな要素だったように感じます。


 すでに決勝への切符を確保しているオランダと比較すれば,「らしさ」を抑え込む程度は緩めかな,と思います。もともと,オランダは相当程度に難解な(ということは,当然にコンディションが高みで安定してくれないと困ったことになるし,「考える」という部分で選手に与える負荷も高い)フットボールを指向してきたわけですから,ちょっとだけ現実的に,と軸足を移したとしても,結構リアルなフットボール,と見られかねないように思います。
 対してスペインは,ここまでのコンディションが安定しているとは言いかねるところがありました。ファースト・ラウンドでの戦いぶりを振り返ってみるにしても,決して安定したパフォーマンスを表現してきたわけではないし,むしろ,ギリギリで勝ち上がってきている,という感じもありました。「らしさ」を表現しようにも,物理的に限度がある,という状態から,そのリミットが外れつつある,という印象があるだけに,難しいことを考えずに「らしく」フットボールをさせる,という方向に意識を束ねやすいのかも知れない,という感覚を持つわけです。


 ドイツサイドから見るなら,リアルという側面に軸足を移してでも,結果を引き寄せようとしたのかな,と思います。その決断は尊重したいけれど,結果として今大会で表現してきた「らしさ」までが抑え込まれてしまったのはもったいなかった。
 このレベルの試合で「受ける」などということは考えにくいけれど,意識がちょっとだけ守備面に傾いたことで,実際上「受ける」のと同じ効果が出てしまったかな,と。その意識と,スペインの「いつも通り」という意識がかみ合っていくことで,試合の流れができていったような。そんな印象を持っています。