Uruguay v. Netherlands (Semi-Final).

「美しく勝利せよ。」というテーゼからは遠いかも,だけど。


 高みを陥れるためには,ある程度現実的な姿勢にも意識を払っておく必要はあろうか,と思います。対戦相手であるウルグアイは,徹底された現実主義者,とも言えるチームです。彼らは,積極的に「攻めて来てくれる」ことを待っているはずです。前掛かりになったタイミングを狙って,カウンター・アタックを仕掛けていく,と。


 相手のフットボールに乗らないためには,理想だけを押し切るのではなくて,現実的な要素にも軸足を置く。ファースト・ラウンドの段階では,チームのピースがそろわなかったという事情もありますが,どこかコンディションが100%からは遠い,という印象がありました。
 しかし,セカンド・ラウンドに入ってからは「コントロールしている」という印象が強くなってきているように感じます。コンディションを100%にできないなりの戦い方,と言いますか。オランダ,というチームが作り上げてきた戦い方を微調整しながら(局面によっては,大きく覆しながら),「結果」を積み上げてきた。計算をしながら高みを狙っている。そんな印象であります。


 ウルグアイと,オランダで戦われた準決勝(第1試合)であります。


 オランダの印象から書きはじめてしまいましたが,ウルグアイのことを書いていきますと。
 オランダに先手を取られ,さらにはイーブンの状態を崩されたタイミングから立て続けにゴールを割られる,という部分に差を感じはしますが,それでも自分たちのフットボールをあきらめなかった,という姿勢は評価されるべきだろう,と思いますし,現実主義的なフットボールも突き詰めれば,立派なスタイルだ,と思います。


 彼らのフットボールが明確に表現されていたのは,イーブンの状態を崩される前の時間帯,になりましょうか。丁寧な守備応対を繰り返しながら,冷静に逆襲の機会をうかがう。相手のチーム・バランスを「潰す」のではなくて,ロングレンジ・パスによって「引き延ばすこと」を徹底することで,前線が動けるスペースを作り出す。当然,仕掛けられる「個」を持っている,という特徴もありますが,シンプルなだけに分かりやすい戦い方だったな,と思います。


 対して,オランダであります。


 「らしさ」で言うならば,いままでは「ねじ伏せる」方向だけを意識していただろう,と思います。攻撃面での特徴を徹底的に表現しようとする。確かに,アウトサイドから見るならば,この姿勢は魅力的に映りもするのですが,必ずしも結果を安定して引き寄せられる手法か,という疑問符が付きますし,実際の戦績からも残念ながら,理想に殉じてきてしまった,という言い方をせざるを得ないように思えます。
 今大会に関しては,そんな「らしさ」を相当程度に抑え込みながら,相手のフットボールに嵌らないように,という戦い方をしていたように感じます。ウルグアイを相手にも,その姿勢に例外はなかった。ハイプレスよりもリトリートに寄った守備応対,攻撃面での流動性を強く意識付けるよりも,ブロックとしての安定性を優先させる。ファン・マルバイクが持ち込んだアプローチ,だろうと思いますが,トーナメントを戦っていくにあたって,オランダにともすれば欠けていたかも,と思われる要素を持ち込んだような印象も持ちます。


 ただし。1−1のイーブンを崩してからの時間帯は,それまでのイメージもしっかりと継承しているということを示しているような印象を持ちました。攻撃面での迫力,ラッシュを掛けるときの厚みを捨て去ってまで,守備的な安定性を志向しているのではない,と。


 さて。「古豪復活か」と言われていたウルグアイを退け,決勝戦へと駒を進めたのはオランダであります。オランダ,という名前から持つイメージからすれば,「らしくない」試合だったかとは思いますが,準決勝ともなれば「負けたくない」という意識が強くなっていくのは当然のこと,でもありましょう。むしろ,「高み」を獲りに行く,という姿勢が明確に感じられる,という部分を個人的には評価したいな,と思うのです。