原点回帰(Japan v. Cameroon - Group E・#1)。

チームが持つ原点,と言うよりは。


 指揮官が得意としてきたフットボール・スタイル,という意味での原点を感じさせる試合でありました。確かに,ここまでのフットボールも局面に応じて表現されてはいたけれど,軸足をどちらに置いたのか,と考えると,もともと主戦としてきたフットボール,という方向性に大きく方向転換してきたな,という印象を受けたわけです。


 自分たちのフットボール,という基準点を大事にしながら,同時に相手のフットボールを効果的に抑え込み,強みを表現させない戦い方をさせる。短期とは言いながら,ファースト・ラウンドはリーグ戦ですから「勝ち点」を積み上げていくための現実的な道筋が重要になる。この道筋を意識させることは,本来この指揮官が得意としてきたことのはずです。


 やっと,得意とする解法に戻ってきた。「勝ち点3」を獲れるのだから,もっと早く得意な解法を出しておけば,と言いたい(最大限好意的に言えば,戦術的な幅をつくっておきたかったのでしょうけど。)初戦・カメルーン戦であります。


 4−1−2−3と言いますか,4−1−4−1というか。


 やはり,このパッケージで最も重要なのはCBと低めに構えるセントラル・ミッドフィールドとの関係性なのだな,と感じます。CBの持っている特徴を思えば,相手ボール・ホルダーに対するファースト・アタックを得意とするようなスタイルではありません。むしろ,カバーリング能力を強みとするフットボーラーではないかな,と思うのです。となると,チームをブロックとして低く構えさせる,という方向性はいいとして,その低さが想定以上になってしまう可能性が出てきます。チームが,バランスを取った形で戦っていくためには,ボール・ホルダーに対するアタッカーがほしい。
 どこかのクラブ・チームでも言われる話ですが,“アタック&カヴァ”が成立しないと,守備バランスが悪くなる可能性を孕むことになります。イングランド戦時点で,このバランスを修正してきたことが,原点回帰に向けたひとつの鍵,というか,予告だったように思われます。


 もうひとつの鍵が,トップとウィンガーの再構築,であります。


 いままでのフットボール・スタイルで,自分たちの攻撃リズムをつくれるか,となると,なかなか厳しい相手がそろっている,ということになろうか,と思います。もうひとつのグループE初戦を見ると,なおさらに。
 プレッシングの要素は捨て去ることなく,チームを「ちょっとだけ」低めに構えさせる。SBにしても,攻撃面にウェイトを掛けると言うよりは,守備面を意識させる。となると,攻撃ユニットを絞ったシンプルな仕掛けが見えてきます。決勝点を奪取した局面を思い返してみても,攻撃にかける枚数はそれほど多くなく,組み立てもシンプルなものでありました。縦への機動性であったりを意識しながら,同時に守備面でのウェイトにも意識を払える。そんなパッケージへと構築し直してきた,ということでありましょう。


 めぐりめぐって,得意な解法に戻ってきたような形ですが。その解法,やっぱり使いやすいのだな,と。


 ただし。相手がネガティブ方向のポジション・フットボールだった,という要素を差し引くべきでしょう。また,チームが潰れてくると厳しい時間帯が出てくるな,とやはり感じます。アタックするタイミングと,カバーに入るタイミングとが接近しすぎたり,ボール・ホルダーに対して徹底して詰めるべきタイミングで,詰めることができなくなると,当然ながら厳しい局面をつくられることになる。第2戦,第3戦に向けて修正していくとすれば,この時間帯をどのようにマネージするか,ということになりましょう。スターターだけで,というよりも,戦術交代をフルに使い切りながらどのように戦うか,というダッグアウト勝負の側面も強くなるだろう,と思います。


 ともかく。初戦での「勝ち点3」は大きな意味を持ちます。グループリーグで望むスタートを切れた,ということに,さらなる意味を積み重ねていけるような準備,そして2戦を,と思います。