グラーツでリスタート(対イングランド戦・IFM)。

調整段階としては,悪くないですね。


 少なくとも,戦うイメージを取り戻してきているな,と感じます。もちろん,IFMでありますから課題を表面化させることが重要であって,この試合でも課題が出てきているように思います。その課題を,どう本戦に生かしていくか。やっと,戦闘集団としてあるべき準備の循環が見えてきた,というのが最も大きな収穫なのかも知れません。


 グラーツでのイングランド戦,であります。


 まず,この試合で採用された戦術パッケージでありますが,悪くないな,と思います。(敵将は9−0−1,などという表現をしていましたが)いわゆる,“4−1−4−1”であります。ウィンガーである大久保選手,本田選手をトップとの距離感,ではなくて,遠藤選手,長谷部選手で構成するセントラルとの距離感を意識させ,低めに構えさせる。同時に,中澤選手と闘莉王選手で構成されるCBコンビの前にシングル・アンカー(としての役割を持ったセントラル)として阿部選手を配置,という形であります。この形,イングランドを相手に相当程度に機能したな,という印象を持ちます。


 また,リズムをつかむことができたことも,収穫として挙げるべきでしょう。


 中野田でのフレンドリーでは,ともすれば自分たちが仕掛けなければ,意識を徹底しておかなければいけないゲーム・プランを相手に表現され,早い時間帯で相手の描くフットボールに乗せられることになりました。この試合では,しっかりとイングランドを自分たちの描く形に引っ張り込めている。チームの機動性,という部分でイングランドがいささか「静的」であった,という部分は割り引くべき部分かも知れませんが,全体的なリズムを取り戻させずにハーフタイムを迎えられた,というのはポジティブな部分でありましょう。


 ただ。どのようなゲーム・コントロールをするのか,というのが課題かも知れません。


 後半,イングランドは大幅な戦術交代を仕掛ける(国際親善試合ですから,徹底してテストをしたかったのでありましょう。)ことで,ギアを入れ替えてきます。この相手のギアチェンジに対して,ちょっとだけ後手を踏んだのかも知れませんが,後半になると相手のプレッシャーに曝される時間帯が増えていきます。
 このときに,「受け止める」形を描いてしまうと,恐らく試合をコントロールするのは厳しいかな,と感じます。とは言いながら,機動性を90分プラスにわたって,高みで安定させ続けるというのも相当に厳しいのも確かです。「勝ち点3」という状況をどのようにして維持するか,「勝ち点1」を確保するためのアプローチをどのように,という部分で,格好のシミュレーションができるか,と思ったのですが,指揮官が戦術交代を仕掛けていくタイミングは,必ずしもゲームの主導権が動いていくタイミングと近似しているようには感じられませんでした。それだけに,どれだけリザーブ戦術的に使えるか,という部分がかなり明確な課題として出てきたな,という印象を持っています。


 相手がラッシュを仕掛け,攻撃リズムを強めてきているときに,機動性を維持した守備が仕掛けられるか,が求められるかな,と思うわけです。であれば,コントロールの幅は相当に繊細なものになるのかな,と思ったりします。それだけに,スターターだけで90分プラスを押し切っていくのは難しいだろうし,戦術交代の枠を徹底的に使い切るような意識を徹底しておかないと,繊細なコントロールは厳しくなってくるかも,と。


 とは言いながら,でありますが。


 一時期は,こういうフットボール的な話をしよう,という状態でなかったのも確かでして。やっと,本来あるべき道筋に戻ってきたのかな,という印象の方が強かったりします。あと1試合組まれている,インターナショナル・フレンドリーで,イングランド戦からののびシロを感じられるか。ともかく,いい準備を,と思います。