乱れたリズム(対山形戦)。

あっちは速くされ,こっちは遅くされ。


 月曜日の代表戦と対比しながら,大ざっぱな言い方をすればこんな感じでありましょうか。そして,相手にゲームをコントロールされてしまったことが共通項,でありましょう。決して小さくない課題を提示された試合だろう,とは思いますが,見方を変えれば,2010スペックなフットボールを進化させていくためのヒントを提示されている,とも言えます。「勝ち点0」に終わった,という結果も重要だけれど,そこだけにとどまっているわけにはいかない。


 ということで,山形戦であります。


 まずは,守備面の課題でありますが,組織的な守備応対に意識を振り向けるエリアではないエリアで,あまりに中途半端な応対をしてしまったな,と感じます。先制点を奪われた局面を考えると,守備ブロックが背後に背負っているスペースは狭かった。意識を傾けるならば,ストリクト・マンマークに近い形で厳しく応対に行く必要のあるエリアだったか,と思うのです。どうもこの試合では,意識の切り替えがスムーズではなかった,という感じです。


 確かに,センターからの攻撃に対しては,アタック&カヴァという形で組織的な守備応対ができていますし,チームをコンパクトに維持する,という部分から見ても組織性は重要な要素であります。ありますが,サイドからトラバース,というときにはどうしても,組織的な守備というよりはマンマークに近い形が必要になってくるはずです。
 中央にボールを追い込めていないのですから,センターを基準とするアタック&カヴァというわけにはいきません。どうしても,ボール・コントロールを奪われたタイミングでの守備応対が求められることになるのですが,この局面を相手は戦術的に固めていたようです。さらにこの試合では,SBが攻撃参加した「直後」を狙っていただろうことがうかがえます。攻撃的に仕掛けてくる,そのタイミングを狙っていたな,と。


 相手のスカウティングによって,複数の課題を突き付けられた,という形になりましょう。


 組織的な応対,という意識付けが,ひとへの意識付けを強めるべきエリアにあっても残ってしまっている,というか。そのために,エリアへと侵入してくる相手攻撃ユニットに対して,意外なほどに守備応対が緩くなってしまった。この試合のように,組織的な守備応対からひとへの守備へ,というギアチェンジがスムーズにできていかないと,この課題は積み残しになってしまいます。当然,守備ブロックの対応,と言う以前に誰が相手ボール・ホルダーに対してアタックを掛けるか,そのあとのカヴァに誰が入るのか,そのカヴァによって守備ブロックがどのようなコンビネーションになるのか,という基本的な約束事の整理,徹底も重要ですが,さらなる熟成を進めるためにはマンマークの要素をどのように組み合わせるか,も不可欠な要素でありましょう。


 対して,攻撃面でありますが。


 速度をコントロールできていなかったな,と感じます。スローに保持するべき時間帯と,猛然と仕掛けるべき時間帯をつくれると,というようなエントリを上げたことがありますが,この試合ではスロー,といいますか,攻撃を加速できない時間帯をつくられてしまった。
 ポゼッション,という部分だけを取り出せば確かに確実性は増しているとも言えるのですが,反面で仕掛けを強めよう,というスイッチの段階でタイトな守備応対に引っ掛かる。数字の話で言うならば,攻撃ユニットの1−3の関係性が分かりやすくなってしまっているために,1にボールを当てるタイミングを狙われてしまった,という印象が強く残ります。同じ1−3でも,2−2に近い時間帯をつくることでボールを当てるステーションを分散するなど,相手のフットボールに対応する形での調整をかけられなかったために,相手が描いてきたゲーム・プランから抜け出すことができなかったように映ります。


 だからと言って,いまのフットボールの限界,という話に持っていこう,というつもりはありません。であれば,当然にポゼッションか,それともカウンター主体の攻撃か,という話ではなくて。


 基盤をどのようにして調整,調律していくのか,という部分が試されている,という印象を持ちます。組織的な守備応対,という要素そのものが悪いのではなくて,高さに応じた,エリアに応じた守備応対を切り替えていくことが守備面では求められるだろうし,攻撃面ではステーションが相手守備ブロックに抑えられたときのステーションの分散や,攻撃リズムを相手に抑え込まれる形で減速するのではなく,むしろ相手を引き出す,相手がセットしているだろうボール奪取位置をこちらが変えるような形で落としていく,そこから加速させていくなど,もっと揺れ幅を自分たちからつくっていく方向に持っていけるといい。この試合のように,リズムを乱されるのではなくて,自分たちからリズムを操っていかないといけない。そのためのポゼッション,というステップに上がっていく必要があるはずです。
 相手は恐らく,相当徹底して浦和のフットボールをスカウティングしたはずです。であれば,浦和のウィーク・ポイントを徹底的に突いてきた,と言うこともできます。言うまでもなく,突かれたポイントこそが戦術的な修正を掛けるべき部分,ということになります。基盤をどのように生かしながら,この課題を潰していくか。ある意味,最も重要なレッスンでありましょう。
 失った勝ち点,失ったゲームがシーズンを終了するときに「意味があった」とするためには,この試合から導かれる課題を,徹底して潰すことが求められるか,と思います。