「抜ける」を潰して(A5N)。

いささか,失礼な言い方になると思いますが。


 アジア・レベルで「抜けた」時間帯があったとしても,致命傷にはならないかも知れません。


 ポテンシャル,ではありません。明確にパフォーマンスで差を付けているのだから,跳ね返せて当然,と思っています。トライを奪われたとしても,そのトライを跳ね返すだけの反発力は当然に持ち合わせている,と。けれど,狙っているのはアジアのトップ,というわけではないはずです。であれば,プレッシャーがそれほど強く掛かっているわけでもないアジアのゲームで,「緩さ」を感じさせる時間帯が出てしまう,相手に逆襲を繰り出されるようなミスを誘発するのはどうなのだろう,と思ってしまいます。


 どうも,カザフ相手にも「抜けた」時間帯はあったような感じです。であれば,大量得点差ではあるけれど,まだまだ課題はある,と言うべきかも知れません。


 さて。楕円球な話であります。HSBCアジア5ヶ国対抗であります。


 秩父宮での3連戦,その2戦目にあたるカザフスタン戦では大量得点を奪取しての勝ち点積み上げだったからか,“パワー・ラグビー”という評価をされる向きもあるようです。ただ,個人的には「らしい」アプローチではないかな,と思っています。そして,JKがこのトーナメントで強調していた「立ち上がり」,そのことがどのような意味を持つのか,を考え合わせてみると,ラグビー・ネイションズに対してどのような勝負を挑むつもりなのか,何となく,ではあるとしても推理できるように思います。今回は,ちょっとそんなことを。


 実力差のある相手に対して,どのような戦い方をすべきか。


 少なくとも,相手が「予想していない」形に持ち込まないと,勝機は見えてこない,ということになるでしょうか。たとえば,相手が構築してきているはずのゲーム・プラン,そのプランを立ち上がりの時間帯で積極的に崩しに行く。そんなことを,JKは意識しているのではないかな,と思うのです。そのために,立ち上がりにこだわっているのだろう,とまずは思います。リズムを掌握してしまうことで,相手を混乱に陥れる,と。当然,混乱させる時間帯は長ければ長いほどいい。ハーフタイムを挟んでも混乱してくれれば,さらにいい。言うまでもなく,この混乱を付いて得点を奪取するところまで意識しているはずです。


 そのときに,武器にしようとしているのが局面ベースの俊敏性なのだろうな,と感じます。当然,局面を打開するときの「個」も大事な要素ではあるのですが,ボール争奪からボール・コントロールを奪う,あるいはキープする,そしてボールを展開する,という流れが速く組み立てられているな,と感じるわけです。であれば,キックではなくて,パス・ワークを基盤にしながら攻撃を組み立てています。積極的にエリアを高めて,というのであれば,キックも重要な要素ではあるのですが,ボール・コントロールを奪い返す,という局面で自分たちの武器を生かせない可能性も考えておかないといけません。もちろん,ボール争奪をきっかけに,相手にリズムを渡してしまう危険性も。そんな部分を意識して,パスにこだわった攻撃スタイルを狙っているのかな,と思うわけです。


 というようなことを考えつつ,A5Nを振り返ってみる(まだ終わってませんが)と。


 「ある程度」狙った形を表現できている,ということになりましょうか。


 立ち上がりを制する,リズムを積極的に引き寄せるという意識は確かに徹底されているかな,と感じはします。しますがしかし。どうしても,「抜けた」時間帯を消し切れていないな,という印象です。少なくとも,相手の鋭いプレッシャーにさらされてしまったがためのミス,というのではなくて,どこか緩さを自分たちから生じさせたがためにミスを誘発してしまって,相手にリズムを譲り渡す,という形になっているようです。となると,厳しい相手ですと,この時間帯がクリティカルなものになりかねません。で,「ある程度」,と。


 香港戦が終わっていない現段階で,RWCのことを意識するのはいささか早くもありますが,「抜ける」時間帯を徹底して潰していく,という意識を高めていかないと,ラグビー・ネイションズとの真っ向勝負をする,そのゲームで勝負権を持つことは難しくなってしまうように思います。香港戦では,「勝って終わること」が最優先課題なのは当然として,どれだけ「抜ける」時間帯が潰せるか,という部分も重要になってくるものと思います。