スパーズ、欧州カップ戦へ。

ゆっくりと,ゆっくりとチームをボトミング・アップしてきた。


 アウトサイドからすれば,ちょっと遅いのではないか,と思うところもありましたが,急激なジャンプ・アップを狙ってしまえば,そのジャンプ・アップをしくじったときの反動はクラブを揺るがすものとなってしまう。そんな道筋をたどったクラブも実際にあるわけですから,彼らの歩みは決してネガティブに捉えるべきものではない。


 そんなことを思ったりします。


 今回はひさびさに欧州な話を,日刊スポーツのニュース記事をもとに書いていこう,と思います。


 プレミアシップで勝負権を残しているのは,スタンフォード・ブリッジオールド・トラフォードです。プレミアシップ・ポイントで言えば,彼らの間にある差は僅かに1。痺れる「同時刻開催な最終節」が味わえる状況ではありますが,ちょっとだけ視点を下方向に下げてみます。3位に付けているアシュバートン・グローブ,よりももうちょっとだけ下であります。最終節を残して,欧州カップ戦への出場権,正確には本戦出場権をかけた予選への切符を奪取したのが,トットナム・ホットスパーであります。


 アシュバートン・グローブを本拠地とするクラブと同じく,北部ロンドンのホワイト・ハート・レーンに本拠地を置くクラブであり,ガンナーズとの“ノースロンドン・ダービー”はリーグ・スタンディングとはまったく無関係に熱さを持った試合として知られるところであります。ちょっと失礼な表現かも知れませんが,スパーズを追い掛けているひとたちの思いは別として,スタンディングが接近した状態での(名実ともに「勝ち点3」以上の意味を持った)ゲーム,という印象が薄かったのも確かです。


 ただ同時に,個人的には“ポテンシャル”を持ったクラブだと思っていたところもあります。ただ,残念ながらポテンシャルをパフォーマンスへと変換するに際して,どこか引っ掛かっていると言いますか。


 クラブの歴史を紐解けば,“CHAMPIONS”という称号を手に入れた経験は2回にとどまっていて,「強豪」という言葉も,「古豪」という言葉も残念ながら使いにくいクラブではあります。ありますが,タイトルを“WINNERS”に変えてみると,違った印象を受けるのも確かです。リーグ戦を戦い抜くだけの総合力,という要素を考えると不安ではあるのだけれど,カップ戦を勝ち抜くための加速態勢を築き上げられるだけのパフォーマンスを備えてきているクラブ,という見方も成り立つのかな,と思うわけです。どこかに「壁」があって,その壁を突き破れずに(というか,越えられずに)中位に甘んじてきた,と。


 しっかりとかみ合ってほしいギアが,どういうわけかギア抜けを起こす。加速を引き出したいときに,最も使いたいはずのギアが,よりにもよって抜けてしまう。そんな印象と重なるようなクラブではあったのですが,2009〜10シーズンにあっては致命的なギア抜けを起こさずに,本来持っているはずのパフォーマンスを表現することができていた,という感じを持ちます。そして,今季の順位表を眺めると,ノースロンドン・ダービーの熱さ,特に2010〜11シーズンにおける熱さは約束されたようなものだな,と感じます。加えて言うならば,2010〜11シーズンでの欧州経験が,クラブにとって「壁」を突き破るひとつのきっかけになるといい,と思っています。