対名古屋戦(10−10)。

立ち上がり,は大きな課題でありましょう。


 恐らくは,スカウティングを外されてしまったことが作用しているのだろう,と思います。相手のパッケージ変更に対して対応が遅れてしまったことで,「受ける」時間帯が生じてしまう。それは当然,浦和が意識するボール奪取位置でボールを収められない,という形にも結び付きますし,相手が高い位置でボールを循環させることにもつながってしまうことにもなります。


 ただし。守備ブロックが「高さ」に対して機能しきれなかったのは,スローインからのリスタートでした。受けている時間帯に,守備ブロックが高さを含めて揺さぶられたわけではなく,同時に相手が(あまりにあまりな,という表現を付け加えるべきでしょうが)決定的な形を決められない,という部分が,結果としてこの試合で意味を持ったように感じられます。
 ということで,1日遅れの名古屋戦であります。


 まずは,相手にまつわる数字な話,からはじめようと思います。


 4−3−3と3−5−2,であります。キックオフ直後は確かに,シングル・アンカーを置く4−3−3であるように受け取れました。ただ実際には,アンカーのポジションに入っているはずが,アウトサイドに大きく流れ,逆サイドのSBもさらにアウトサイドへと開く。バックラインだけで言えば,反時計回りに旋回させている,と言いますか,右サイドを意図してカチ上げるような形,と言いますか。もともと,4−3−3もサイドでの主導権を狙うパッケージでありますが,そのコンビネーションを浦和エンド方向へと近付ける戦術的なシフトを仕掛けてきます。
 このシフトに対して,浦和は後手を踏んだ,と言わざるを得ないように思います。好意的に解釈すれば,ゲームに入る前段階において,対戦相手に対するスカウティングをしてきている,ということになりましょうが,オン・ザ・ピッチでの変化に対して,自分たちをアジャストするのに時間が掛かってしまった,という印象です。アウトサイドで攻撃を組み立てる,というよりも,相手のパッケージ変更に対するアジャストメントに意識が傾き,結果として相手の攻撃に対して「受ける」形になった。ボール奪取位置が不明確になってしまう,というデメリットをも含めて,修正すべき課題であろう,と感じます。


 とは言いながら,「高さ」が剥き出しになる局面を相当程度抑えられた,というのが「勝ち点3」奪取へのファクタ,そのひとつだろう,と思います。物理的な「高さ」では,確かに相手にアドバンテージがある。特に,セットピースなど,ゴールマウスまでの距離を縮められるケースでは,「高さ」を脅威に結び付けられてしまうことにもなりかねない。けれど,トップがポジションを変えながらボールの落下点へ,という形であれば,いまの守備ブロックならば「駆け引き」が通じる。ジャンプのタイミングなどによって,フリーな状態でボールに合わせられることのないように守備応対をしていく,という形に持ち込める。今季のセンターが持っているストロング・ポイントからしても,厳しい守備応対になるのは当然としても,決定的な形に持ち込ませない,という方向性が徹底できたものと思います。
 また,相手は先制点奪取ご,ギアが加速方向ではなくて,加速を抑え込むような方向性に入っていたようにも受け取れます。ポジション変更に対するアジャスト,そのアジャストに時間が掛かっている浦和に対して,自分たちのフットボールへの「安心感」,のようなものが広がったのかも知れません。知れませんが,相手の戦術パッケージへのアジャストが効いてくると,ゲームを加速させることができるようになってきます。


 言ってみれば,「受けて」入ってしまったがためにリズムをつかみきれなかったのが前半だったか,と思うのですが,ハーフタイムは戦術的な役割整理であったり,浦和が狙うべきフットボールの再確認などで実効性の高い修正が掛けられたのではないか,と感じるところです。
 相手とのバッティングによって予想外の戦術交代を掛けることにはなった(とは言いながら,「大事をとって」という意味合いの交代だったとのこと)のですが,その戦術交代が今節のパッケージにあっては攻撃面でのアクセントとして機能した,という側面があり,このことも含めて後半開始からのリズム掌握,という部分につながっていったか,と思われます。


 再び,相手のフットボールを考えてみますと。
 攻撃面が,絶対的な高さを持ったトップからの逆算によって構築されている,という印象は確かに強いものがあります。なればこそ,トップに対して正確性の高いボールを繰り出せるタレントが重要性を持つ,ということにもなるでしょう。決定的な武器,という見方も確かにできるか,と思うのですが,反面でチームをコンパクトに,という意識が自然と抑え込まれてしまうのではないか,という印象も同時に持つものです。
 実際,今節で言うならば前半と比較してみると,後半の相手はコンパクトネスを維持できない時間帯が増えてきていた,と思います。このことは裏返すまでもなく,浦和にとっては攻撃を仕掛けるにあたってのオプションが広がる,ということを意味するものです。攻撃ユニットがコンビネーションを繰り出すための「距離感」を維持することも難しくなくなってくるし,ある意味で相手がバランスを崩しているわけだから,カウンター・アタックを繰り出すこともできることになります。後半に奪取できた得点は2,でありますが,もうちょっと得点を上積みできた,と思わせる攻撃を仕掛けることができていたようにも感じます。


 ・・・いわゆる「難敵」であります。


 過去のスタッツを紐解けば,「相性」を語るまでもありません。その相性は,試合をどのようにしてクローズしようか,という時間帯にチラッとよぎってしまったことでもあります。戦術交代によって,最終ライン方向に意識を傾けたギアチェンジを仕掛けていくわけですが,戦術交代に際しての「整理」が中途半端だったのか,守備面で役割がかぶることが増えてしまってもいました。まだまだ,10スペックは粗削りなのだな,とあらためて意識させられる要素でもありました。
 ただ同時に,しっかりとしたクローズとは言えないとしても「難敵」を退けて「勝ち点3」を奪取するというのは意味がある,と感じます。第8節のように,「徹底された」相手に対してどう戦っていくか,というのは今季を左右する課題か,と思いますが,第9節を思えばポテンシャル,といいますか,蓄積された要素が確かにある,と感じさせるところはあります。それだけに,「勝ち点0」という状況が続いてしまうこと,そのことによって今季のフットボールへの確信が揺らぎはじめることは避けたかったはずです。スタンディング上位との対戦でもあり,物理的な勝ち点3にとどまらない意味もありますが,方向性に対する確信を積み重ねていく,その意味でも0を止められた,というのは大きな意味を持つ,と思っています。