A5Nという「予選」。

1位通過を目標とするだけでは,間違いなく足りない。


 射程に収めていなければいけないのは,ファースト・ラウンドを通過すること,でありましょう。そのためには,ラグビー・ネイションズと少なくとも互角,可能であればゲームを取りうるだけの戦い方を作り上げていくことが求められてきます。アップセットを演じるためにはひとつのゲーム,その立ち上がりの時間帯からアップセットをつくっていくことが必要であり,であれば高い集中が求められることになる。


 JRFUがまとめたマッチ・レポートに,ヘッドコーチや選手たちのコメントが示されていますが,彼らもA5Nを「通過点」として意識しているようです。


 さて。フットボールではありますが,楕円球な話を。A5N,と略されますが,ラグビー・ワールドカップ予選を兼ねている,アジア5ヶ国対抗であります。1回戦総当たりのリーグ戦,でありまして,日本代表の初戦はアウェイでの韓国戦でありました。
 ファイナル・スコアからすれば,確かに安定した戦いぶり,という言い方もできますが,対アジア,という側面だけで話を完結させることはできない,というのが,過去における「本戦」から導けるか,と。いささか厳しい言い方になってしまいますが,本戦に「勝ちに行っている」状態になかなかなりきれていない,のです。JKが指揮を執るようになった前回大会でも,ラグビー・ネイションズとの距離を詰めていった,という感覚を結果という部分から受け取ることはできませんでした。
 言うまでもなく,対アジアという戦いを制することなしには,本戦への挑戦権を掌中にすることすらできません。ですが同時に,ジャパンの狙うラグビーは,アジアでの本戦出場権を確保できるレベル,ではなくて,ファースト・ラウンドで勝負権を握れるだけのもの,でなければならないのも確かです。
 JKの試合後コメント(JRFUオフィシャル)にある,「最初の40分」とは前半のことであり,このコメントからは,立ち上がりの時間帯から激しく,緻密に戦うことを狙っている,というのが見えてきます。ラグビー・ネイションズのリズムで戦わされるようでは,いつまでも彼らとの距離を詰めていくことはできない。そうではなくて,自分たちのリズムで戦えるように,立ち上がりからしっかりとリズムを引き寄せられるような戦い方を意識する,と。この部分で考えると,確かに実戦から遠ざかっていた時間がありますから,ある程度は差し引くべき部分もあるのかも知れませんが,狙う位置を思えば,この「差し引くべき要素」を考えるわけにはいかない,というのもまた,確かであるような印象もあります。


 ともかくも。初戦を制したのは確かなことです。マッチ・スケジュールとしては,アウェイ・マッチが初戦の韓国戦だけであり,あとは東京・秩父宮のゲームとなりますから,「立ち上がり」という課題をどれだけ早い段階でクリアできるのか,が求められてもくるか,と思います。
 第2戦は今週土曜日,アラビアン・ガルフ戦となります。緊張感ある国際試合を通じて,課題を見つけたわけですから,ぜひともその課題をクリアする,少なくともクリアする道筋を見せてくれるような試合を期待したい(とは言え,ファースト・プライオリティは浦和に置いているので,秩父宮で,というわけにはいきませんが),と思います。