対磐田戦(10−08)。

自分たちのフットボール「引きずり込む」と言いますか。


 相手のゲーム・プランを崩し,自分たちのゲーム・プラン(フットボール)へと持ち込んでいく姿勢,と言いますか。どうも,今節はそんな姿勢が薄かったような印象です。あくまで相対論ではありますが,立ち上がりから相手に主導権を握られた状態,「受けている」状態でゲームに入ってしまったのが大きいかな,と感じます。


 まだまだ,「どのような相手」に対しても,自分たちのフットボールを,という段階までにはきてないな,と再認識する試合でありました。磐田戦であります。


 今回は,相手のゲーム・プランを考えてみることからはじめてみます。


 まず。中盤での勝負に真正面から乗らないこと。中盤で組み立てる,という意識でゲームに入れば,セントラル・ミッドフィールド,そしてビルドアップでポジションを下げてくるアタッキングに速いアプローチを受け,比較的高い位置からの攻撃循環をくらってしまうことになる,と。そうならないためには,中盤でのビルドアップはある程度省略,シンプルに「縦」を狙う形を意識させる,と。
 もうひとつ。守備ブロックを極力崩さないこと。相手攻撃ユニットを窮屈な状態に追い込むために,CBとセントラルで組まれるブロックを低めに構えさせ,できるだけ吊り出されないように意識させる。そのために,当然SBの意識も攻撃面ではなくて,守備面方向に振っておく,と。


 というような狙いに,無意識的に乗ってしまったな,という印象を持ちます。


 相手の攻撃面は,「縦」への鋭さを徹底的に意識したものでした。前節までは,シンプルな縦をそもそも許さない形になっていましたし,相手も守備意識だけを徹底したゲーム・プランを組んではいなかった。そのために,速攻に入る前段階で,攻撃への速度を減速させることができていましたし,その減速によってチーム・バランスを整える(サイドのスペースが空いているときに,そのスペースを潰すために,チームをスライドさせる)だけの時間を持つことができました。しかし今節にあっては,「スライドさせる時間を与えない」ことを意識して,深めのエリアにロングレンジ・パスを繰り出す,という方法論を持ってきた。失点時もチーム・バランスが傾いてしまい,反対側のスペースへの対応が完全に出遅れる形になっていましたし,ゴールを奪われる,とまでは行きませんでしたが,同じような形でゴール・マウスを脅かされる,という局面をつくられていました。


 であれば,攻撃面での“アイディア”が求められることになりましょう。


 2トップ,というよりも,1トップ的な時間帯が長い。そのときに,1トップを徹底してサンドする,という意識を持った相手に対して,どのような応用を効かすのか,が求められてくるように思います。縦方向のギャップを意識するのであれば,横方向での距離感を縮めていくことも求められるでしょう。単純にリターンを受け取りながら縦に,という仕掛けがあってもいいし,相手守備ブロックに隙間を作り出すためのフリー・ランを仕掛ける,という時間帯があってもよかったな,と。今節の攻撃はどこか,リズム・チェンジが機能しなくて,ボックス近くまでの攻撃がほぼ同じビートで刻まれてしまっているように感じられました。ビートが同じになってしまうと,守備応対についてのリズムを崩す必要もなくなるわけですから,守りやすいリズムをつくってあげている,という形にもなってしまいます。
 攻撃のギアを,どの段階で加速方向へと入れ替えるか,という見方もできますし,同じリズムでボックスに近付く,と見せておいて,積極的にシュートを打ちにいく,という形でもいい。自分たちのフットボールではないリズムでゲームが進んでしまっているときに,ちょっとだけ「志向するフットボール」とは違うアクセントを付けることで,自分たちのフットボールへと引き込むきっかけをつかむ。そんなワンクッションが,今節にあってはなかなかつくり出せなかったかな,と感じます。


 ・・・必ずしも,ネガティブな印象「だけ」で支配されたゲーム,だとは思いません。少なくとも,チャンスはあったわけですから,「勝ち点3」の可能性を残してもいたゲーム,と見るのがフェアでしょう。それだけに,ある側面では“NOT OUR DAY”という言葉で今節を説明することも不可能ではない。ポスト,あるいはクロスバーへの説明は,これ以外にできない,ということもあります。ただ同時に,チームがさらなる上積みをするためには,しっかりとした対策をする必要がある戦術課題を明確にしてもらった,と見ることもできます。
 「勝ち点3」と引き換えにしたレッスンなのですから,「勝ち点3」以上の戦術的な上積みを,と強く望みたいところです。