共通項と相違点と。

何となく,理解できるような気もします。


 就任前でしたか,メディアのインタビューに祖母井さんが,「いっしょに仕事をしたい」というコメントを残していたかに記憶しておりますし,どこかに共通項を持っているのは確か,ではありましょう。ただ個人的に思うところとしては,「戦術の浸透のさせ方」にちょっとした共通項を持っているような,そんな印象を持っていたりします。


 ちょっとアーカイブ,な時期の話ですが,日刊スポーツさんの記事をもとに,アウトサイダーな視点を使いつつ。


 千葉とのTMであります。浦和,千葉双方のオフィシャルをチェックしてみると,「非公開」ということにもったいなさを感じさせるスターターであります。今季はディビジョン2を戦う千葉でありますが,2010シーズンを戦うにあたっての陣容は,驚くほどに分厚いものがあります。ただ,ちょっとした違和感,かも知れませんが,戦術的なバインドがしっかりと掛からないと,「厳しい戦い」を要求されるディビジョン2にあって,難しいチーム・ハンドリングを強いられることになるのではないか,と感じるところです。
 この部分を思えば,江尻監督は狙うフットボール・スタイルと「現実」,この2つの要素をどの位置でバランスさせるか,を探っているのではないか,と感じます。クイック・リターンを狙うのは当然として,相手は間違いなく「現実的な戦い方」を選んでくるでしょう。そのときに,無防備に自分たちのフットボールだけを押し切ってしまえば,現実的な対応の前にリズムを失うこともあり得る話。反面で,今の段階からフットボールの熟成を意識していなければ,クイック・リターンを果たしたあとに苦しむことにもなる。


 浦和は,すでに2009シーズンの段階でこの「難しい状態」に追い込まれ,厳しい時期を経験しています。確かに現実的な戦い方への対策は必要ではあるけれど,中途半端に自分たちのフットボールを現実的な方向へと振ってしまえば,もともと構築してきたはずのフットボール,そのエッセンスまでをも失うことになる。島崎さんの著書に的確に指摘されるところです。そして,今季もまだ「夏季」という厳しさをどう乗り切るのか,という部分での回答を出しているわけではありません。
 恐らくは,狙うフットボールをどのようにして,チーム全体へと浸透させていくのか,その手順のようなものを,模索しているのだろう,と推察します。


 昨季の戦いぶりを追った島崎さんの著書,そして今季序盤の戦いぶりを見ていく限りにおいて,どうやら回答は「狙う戦い方を無意識に引き出すための練習を,徹底させること」が,遠回りに見えて重要な要素であるように思えます。ビブを使うか,それともミニ・ゴールを使うのか,という手法に違いはあっても,狙う戦術を「考えて」繰り出すのではなくて,「自然に」引き出すための手段を使っている,と言うべきでしょうか。
 そういう手段は,そうそう簡単に引き出せるものでもない,でしょう。オシムさんにしてもフィンケさんにしても,「老練」(タヌキ)であります。(時期的に,厳しい時期であることは承知しているけれど,あえて)いろいろと試行錯誤すべき時期,なのではないでしょうか。