対川崎戦(10−07)。

ちょっと早めの中間考査,ですけれど。


 なかなかの好成績で乗り切った,という感じでしょうか。自分たちのフットボール,という基盤から離れられずに基本問題だけをこなすので精一杯,という感じではありません。自分たちのフットボール,その基礎構造はしっかりと生かしながら相手のストロング・ポイントを効果的に封じるためのモディファイを仕掛ける,というように応用問題をしっかりと解いてきた,という印象を持っています。


 さて。いつも通り(省略),の川崎戦であります。
 鋭くカウンター・アタックを繰り出してくる川崎に対して,どうも中野田で分が悪かった。確かなことですが,今節はネガティブな意味での「過去」に意識が振り向けられてはいなかった,むしろ同じ轍を踏まないために何をすべきか,相手のカウンターを効果的に封じながらどのようにして攻撃を仕掛けるか,という方向に意識を強く振り向けて立ち上がっていったように感じます。


 であれば,“相手の出方をうかがう”という形の立ち上がりではありませんでした。


 むしろ,先制点を早い段階で奪取することで主導権を掌握しよう,という意図のうかがえる立ち上がりになっていたように感じます。この意識は,ボールをどのような形で奪っていくか,という要素にも大きな影響を与えていたように感じられます。
 チームが不安定さを見せているときのボール奪取位置は,縦方向に揺れ動いてしまっているように感じます。トップからミッドフィールド,そして最終ラインが同じイメージを描いて守備応対を仕掛けている,というのではなく,どこかにズレを残した守備応対になってしまっている。そのために,相手ボール・ホルダーをルーズにしてしまう。今節にあっては,相手ボール・ホルダーをルーズな状態に置いている局面がごく少なく抑え込まれていました。コントロールを失った直後に,高い位置からしっかりとしたプレッシャーを掛けに行けていたから,ミッドフィールドでのボール奪取,コントロールの回復が機能していました。そして,中盤での守備が機能すれば,最終ラインでのカバーリングにも一定程度の余裕が生まれてきます。当然,破壊力を持った攻撃ユニットを擁する相手ですから,緩い守備応対が許されるはずもないのですが,「組織」での守備が機能することで相手の個を封じる(効果的に分断する)ことができている。これは,「応用問題」のひとつの解だったように感じます。
 加えて言えば,守備応対時に最終ラインの組織性がそれほど崩れていなかったことも,大きな要素ではないか,と感じるところです。局面によってはCBが守備応対でサイドに引っ張り出される形になっていたのは確かですが,そのときのカバーリングをセントラルが担ってくれていたことで,ボックス前のエリアでの守備バランスが大きく崩れることはありませんでした。相手のシンプルなパス・ワークで守備ブロックが揺さぶられ,ブロックが崩されたという印象を受けた局面は,後半相手が戦術交代を仕掛けて以降にあったと思いますが,それでも基本的には相手のストロング・ポイントを有効に抑え込む守備応対が機能していた,と見ていいものと思います。


 組織性を基盤とする守備応対によって,安定性を確保することができていた,と。対して攻撃面では,流動性を生かすことが重要な要素だったように受け取れます。


 今節における静的なパッケージは,それほど大きな意味を持つようには感じませんでした。強いて言うならば,4−4−2ボックスと4−2−3−1の中間形態(トップがちょっとだけ縦方向でのギャップをつくっていることで,アタッキング・ミッドフィールドとの関係性を強くしている)に受け取れるものでしたが,特に攻撃面においてはトップとアタッキング・ミッドフィールド,そしてセントラル・ミッドフィールドが流動性を維持している時間帯が多いので,この静的なパッケージを意識する局面はそれほど多くなかったのではないか,と感じるところです。スペースを積極的に狙っていく,という姿勢が徹底されていることと,ポジションを循環させることで全体のバランスを維持していく(トランジションでのスムーズさを確保する)というバランスが取れてきている,という印象が今節にあっては重要な要素だったかな,と感じます。
 また,「応用」という部分で言うならば,無理にパス・ワークで相手を崩しに行っていなかった,というのも指摘できるかも知れません。09シーズン以降,フットボール・スタイルとしてショートレンジ〜ミドルレンジのパスを交換しながら相手守備ブロックを揺さぶり,ゴールへと迫っていくという形を志向しているわけですが,このすたいるにこだわるがために,どうしても「手数」が増えてしまう形になってしまっていました。この手数が,今節は意外に少なく抑えられていたような印象です。
 シンプルに,縦を狙えるタイミングであれば縦を狙っていく,当然,ゴールマウスを射程に収めているならば,積極的にフィニッシュへと持ち込んでいく。
 先制点,そして直後の追加点はかなりシンプルな仕掛けの中から奪取されたものであり,志向するフットボールからすれば「応用」というカテゴリに入れるべきもの,であるように見ているわけです。


 さらには,ゲーム・コントロールという要素も機能した。
 戦術交代によって4−3−2−1(アンチェロッティ時代のミランのようでありますが。)へとパッケージを変更しながら,攻撃面でのバランスは崩しませんでした。むしろ,セントラル・ミッドフィールドと最終ラインとの関係性を強めながら,フレッシュな状態のセントラルを攻撃参加できる形に持ち込んできます。ゲームを決定付ける3点目を奪取したのが,セントラル・ミッドフィールドであった,というのは「やっと」09シーズンからのフットボールが「自然に」表現できるようになってきた,ということかな,と。


 ・・・もちろん,今節のゲームは高い機動性に支えられているわけですから,この機動性が物理的に抑え込まれる時期に,どのようにしてゲームをコントロールするか(昨季の轍を踏まないか),という視点は重要です。機動性低下をきっかけとして,フットボールへの確信を失わせるようなことが再びあってはならない。でありますが,少なくとも狙うフットボールが自然に表現できるようになったこと,そして相手のフットボールに対応する形でどの要素を押し出すのか,という選択が機能しはじめていることは大きな足掛かり,と言うべきでしょう。


 まだ,楽観のできない相手が続きます。中間考査も「第1回」が終わっただけ,という見方をすべきかも知れませんが,「勝ち点3」という結果を導いた解答用紙は,相当に評価の高いもの,この評価を割り引く必要はどこにもないだろう,と思っています。