ゲタを履くまで(Lions−Fighters)。

どんな競技であっても,「流れ」はあると思いますが。


 ちょっとしたきっかけを与えてしまうことで,「雪崩」を打つかのように流れが傾く。いつだったか,「ギャンブル的な側面」を指摘していた専門家さんがいましたが,納得であります。


 今回は,野球の話をちょっとだけ。


 ファイターズのエース,ダルビッシュ選手が,立ち上がりに不安定さを見せていて,ライオンズはその不安定さを的確に突いて,5得点を積み上げることに成功します。ごく序盤だけを取り出してみれば,テンビンの針はライオンズ,という重りが乗っている方向に大きく振れていた,ように思うわけです。
 しかし。そのあとの攻撃面で,ちょっとした流れをライオンズはファイターズへと渡していたようにも映ります。裏返せば,エースが自分で自分をコントロールすることで,落ち着きを取り戻してきた,とも言えるでしょう。守備面で落ち着きを取り戻したことが,攻撃面へと好影響をもたらしていった,のではないかと。局面ベースに切り分ければ,ごく細かい要素での流れ,かも知れませんが,チームへの影響,という側面を加えてみると,決して「細かい」という言葉では片付けられない,とも言えるように思うのです。


 ライオンズ・サイドから見れば,畳みかけたいタイミングで畳みかけられなかったことがあって,ファイターズ・サイドから見れば,踏みとどまっていかないといけない局面でしっかりと踏みとどまることができた,と。この差が,5回の“グランドスラム”とつながることで,ゲームの流れを引き寄せるきっかけとしても作用した。
 もちろん,本塁打によってゲームの流れを一気に引き寄せるか,それとも,というのは多分にギャンブル的な要素があります。ある専門家さんが指摘していた通り,です。そして,稲葉選手はこのゲームにおけるギャンブルで,見事に結果を出したわけです。ライオンズ方向に大きく傾いていたテンビンの針を,ファイターズ方向へと振り戻したわけですから。
 そして,このイニングはダルビッシュ選手にポジティブな影響を与えたはずです。最終的に,このゲームでは7イニングを投げて球数は148球。2ケタの奪三振,というのはさすがのリザルトでありますが,自責点5というのは,エースとして納得のいくはずもないインデックスでしょう。ただ,「崩れた」状態を最低限に抑えられたことで反撃のきっかけをつかむ,その一端を担っていたことは間違いない,でしょう。そして,ゲームのリズムを立て直すことができてもいた,と。


 野球が持つ,ある種の「怖さ」を見せられたゲーム,という感じがします。