対セルビア戦(KCC2010)。

予定通り,だったのではないでしょうか。


 セルビアの,でありますけれど。


 裏返せば,無防備であったと言いますか,あまりに正直すぎたと言いますか。さらに言えば,攻撃の型にはこだわるけれど,守備の型に対するこだわりはあまりに薄い。チームとして,あまりにバランスが悪い状態だな,と思います。インターナショナル・フレンドリーであっても国際試合であることには違いなく,結果という要素が厳しく求められる試合なのだ,ということがチームには浸透しきっていないのかも,と思わせるゲームでありました。


 ・・・100%フィット,とは思えないフットボーラーがスターターとしてピッチに立つ,という時点で,フットボーラーのコンディションを本当に考えているわけではないな,と思わせるところもあるし,チームとしての機能が「個」に寄りかかっている,ということを示しているようにも思いますが。であれば,結果にこだわる姿勢を求めようもない,かな,と。


 今回は,視点を反対側に振り向けてみることからはじめます。ということで,セルビア戦であります。


 まず,この試合の位置付けが相当に明確だったように感じます。本戦に向けたチーム・ビルディング,そのための重要なテストである,ということです。であれば,モチベーションは高かった,と思うところです。
 しかし同時に。「自分たちから積極的に仕掛けていく」という選択をしてはこなかった。なかなかJリーグでは感じることのできない,“アウェイ・マッチの文法”にしっかりと準拠したゲーム・プランを立てていたように受け取れます。となれば,立ち上がりの時間帯は慎重にゲームを進めると同時に,相手が持っている戦術的な弱点をしっかりとチェックする。その弱点を見極めると,その弱点に向かって攻撃を集中させる。予選でのシビアさを感じさせる,いい意味で「徹底された」ゲーム・プランでした。


 実質的には,前半の45分間だけでゲームを決定付けられた,と見るべきでしょうし,もっと厳しく見るならば,立ち上がりからの“オン・ザ・ピッチなスカウティング”,そこからの的確な守備面,攻撃面でのバインドされた戦術的な意識,という部分でゲームは決定付けられてしまった,というように見ることができるか,と思います。


 この相手に対して,あまりに「自分たちのフットボール」という方向にバランスを傾けすぎてはいなかったか,と感じます。同時に,守備応対が国際試合の持つシビアさを感じさせるものではなくて,「微妙に」ルーズなものではなかったかな,と。確かに局面ベースで見れば,「僅差」という範囲内で収まるルーズさなのかも知れませんが,その僅かなルーズさを,相手はしっかりと見抜いてきている,というのもまた確かです。そして,局面でのスピードで振り切られる,という形に持ち込まれてしまう。前任指揮官が想定していたという,「引いてくるフットボール・ネイション」,その形に近い戦いを,今回のセルビアは見せてくれた,ということになるでしょう。そして,このチームは引いてくるフットボール・ネイションに対するプランが描ききれていない,ということもまた,見せてくれたことになる。


 ボール・コントロールを失った直後のバランスが悪い。


 コメンタリーを担当していた北沢さんも指摘していましたが,ブロックを崩せない,という意識がひとを掛ける,という方向に行くことで守備バランスを崩してしまうことにつながっています。そのために,ミッドフィールドでボールを奪われたあとの守備応対が,ギリギリの形になってしまう,と。オフサイドを狙いに行くにしても,シンプルに速く攻撃を組み立てている相手ですから,判断がちょっとでもルーズになれば,マークを自分たちから剥がしてしまうことにもなる。誰がどう,という話ではなく,守備ユニットがユニットとしての機能を発揮できるような形になっていないから,どうしても「個」の判断が局面に直接反映してしまう,と。ゲーム・インテリジェンスが剥き出しにされるような形ではいけない,というのは今回の相手が示しているところでもあるでしょう。


 ここまで,センターとセントラル・ミッドフィールドとのコンビネーションがほぼ固定されてきた,というデメリットが,これ以上ないほど明確に示されてしまった,という印象です。加えて言うならば,最低限の守備ブロックをどう組むか,という共通理解がチーム全体に浸透しきってはいないのだ,とも。


 ・・・この時期で,この状態はいささか,いささかではないかな,とは思いますが。守備バランスを,どれだけチーム全体で共有できるのか,という部分だけでも再徹底していかないと,いささか厳しいと思います。