ラスト・シーズン。

浦和の本拠地である,中野田からほど近く。


 静かに止まっているトラックを見かけた方もおられましょうか。と言っても,運送会社さんのトラック,というわけではありません。レーシングな世界に関係することを,側面のグラフィックが物語っているトラックなのです。レース屋さんがある,という印象を外側から感じ取るのは難しい場所ではないかな,と思うのですが,実際には日本を代表するレース屋さん,そのひとつが上野田にあって,そのレーシング・ファクトリーが全国を転戦するときに使っているトラック,のようなのです。


 今回は,フットボールを離れまして,バイク・レースな話であります。


 さて。上野田に本拠地を置いているレース屋さんとは,コハラ・レーシングテクノロジーさんです。ケーヒン(CRキャブ,だったりFCRキャブ,という方向で認知されているバイク好きなひともおられましょう)さんとケーヒン・コハラRTを組み,JSB1000クラスにCBRを持ち込んでいるわけです。
 で,タイトルの“ラスト・シーズン”につながるわけです。ケーヒン・コハラRTで長くライディングしてきたのが,伊藤真一選手でありまして,2010シーズン終了をもってJSBからの引退を表明している,というわけなのです。


 個人的な印象を言えば,驚くようなキャリアの持ち主です。2ストロークで世界選手権を戦い,それだけではなくて4ストローク・マシンも柔軟に操ることができる。“500ccマシンを操っているときの彼は,確かに格好良かった。世界選手権,という舞台を思えば,阿部選手や加藤選手の印象が強烈に残っている,というひともおられるか,と思いますが,このひとのキャリアはそれだけで終わることがない,というのがスゴい,と思わせる最大の部分です。しかも,「勝負権」を持っている,と見る者に強く印象づけるポジションに居続けている,という部分に凄みを感じます。
 であれば,レースから完全に離れて,という話ではないのだ,とも言います。ごく大ざっぱな理解をするならば,シーズンを通じて安定した成績を叩き出せる,と自らが確信を持てる状態から完全に離れてしまったタイミングで,というのではなくて,まだ行けるかも,という段階で終わるという決断をしたのだろうな,と感じるのです。


 第1戦は筑波で行われたのですが,残念ながら初戦をいい形で終える,というわけにはいかなかったようです。今季JSBは全7戦で戦われます。シーズンが終盤へと近付いている時期,伊藤真一というクレジットがスタンディングのどの位置にいるか。ヨシムラがJSBから撤退している今季,個人的に楽しみな部分だったりします。